毎年マジで貯めないとヤバイ金額はいくらか 「人生設計の基本公式」を知れば生活が変わる

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あるいは、老後生活費を0.5倍に我慢するのではなく、現役期間を5年延ばしてリタイアを70歳とする手もあります。現役期間を5年延ばして20年にすると、老後期間が5年縮んで25年になります。老後生活費を0.7倍で計算すると、(0.7×600万円)−180万円−(1200万円+1800万円−1300万円)÷30=183.33……万円、分母は{(20年÷25年)+0.7}×600万円=900万円となるので、「必要貯蓄率」は0.2037……つまり約20.4%です。当面の生活は、少し余裕が出来ますが、手取り収入の2割強を貯蓄しなければならないことと、70歳まで働く仕事と健康が必要なことに対して覚悟がいります。

では、もう一人子供がいて、この子も私立の中・高・大に進学させるとどうなるでしょうか?計算は簡単ですが、結果を見るのが怖いので止めておきます!

運用の利益に頼るな!

先の計算式は、将来の資産の運用の利回りとインフレ率がちょうど相殺し合う「実質利回りゼロ」の世界を仮定しています。これはおおよそインフレ並みに手持ち資産を運用できなければならないということでもありますが、現在持っている資産とこれから貯蓄するおカネの運用益に期待していないということでもあります。

一部の読者からは、「ヤマザキさんは、日頃から人々に投資を勧めているのではないですか。しかも、長期にわたる運用なのに、その利回りに期待しないというのはおかしいでしょう」という疑問の声が聞こえてきそうです。

もちろん、職業柄もあり(私は証券会社の社員でもあります)、実は、実質利回りを仮定した計算式も作ってみました(割合簡単でした。iPhoneの電卓があれば計算できます)。プラスの運用利回りを長期的に反映する事も出来ますし、インフレの影響だけを反映させたければ、「実質利回り」をマイナスにすればいい。正直なところ、投資の効果を宣伝するうえでは便利な公式なのですが、「待てよ!」と思いました。

将来の、インフレ率も、運用利回りも、予想することは極めて難しいし、不安定です。例えば、一定のプラスの実質利回りを長期間にわたって仮定することは、必要な貯蓄に対して過度な楽観を持ち込む危険があります。

(1)生活設計には大まかに「人生設計の基本公式」を使い、(2)自分にとって許容可能なリスクの中で資産を運用し、(3)(儲かったり、損したりしたら)資産額の変化を基本公式に反映して必要貯蓄率を時々計算し直せばいい、というやり方が「現実的でかつ簡単だ」という結論に至りました。「長期投資なら、必ず儲かるはずだ」という宗教に頼るのは止めておきましょう。

読者は、何はともあれ、今回ご紹介した公式の数字をあれこれ入れ替えて、現在の生活と、老後の生活のバランスを検討してみて下さい。大ざっぱではあっても、具体的に計算してみることが大切です。計算が出来れば、経済的な老後を不安に思う必要はありません。

ちなみに、所得の高い人も、高くない人も、資産額の大きな人も、そうでない人も、「人生設計の基本公式」で、現在の生活と老後の生活のバランスを考えることが出来ますし、おカネの運用の仕方も、基本的には同じで大丈夫です(リスクを取る資産に投資する金額に大小の違いがあるだけで、運用商品は同じでいい)。

「簡単で間違いにくいおカネの運用方法」については、別の機会にご説明しますので、期待してお待ち頂ければと思います。

山崎 元 経済評論家

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やまざき はじめ / Hajime Yamazaki

1958年札幌市生まれ。東京大学経済学部卒業。経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員、株式会社マイベンチマーク代表(投資と投資教育のコンサルティング会社)と複数の肩書を持つ。三菱商事、野村投資信託、住友信託銀行、メリルリンチ証券など計12回の転職経験を生かし、お金の運用、経済一般、転職と自己啓発などの分野で活動中。著書に『超簡単 お金の運用術』(朝日新聞出版)『「投資バカ」につける薬』(講談社)『お金がふえるシンプルな考え方』(ダイヤモンド社)など著書多数。馬券戦略は馬連が基本。【2024年1月5日編集部追記】2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします。

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