山本:安いんですか?
常見:安いです。100円前後です。私が学生だった頃の貧しさの象徴はカップヌードルなのですが、今の若者にとっては、今や170円前後するカップヌードルは高級品なんですよね。大学生活が楽ではなくなっていることは、データでも明らかですし、普段、学生と接していても肌で感じます。
そんな学生たちに「なぜブラックバイトにハマるのか?」と聞いたら、「それは楽しいからだ」という身も蓋もない答えが返ってきたんですね。ブラックバイトと世間からは思われているアルバイト先では、ちゃんと承認してもらえる、と。
神津:日本人の勤勉さ・まじめさにつけ込んで、使い潰すような経営がまかり通るようなことは本当に許せません。一方では「18歳選挙権」で、今さらのごとく主権者教育の必要性が言われているでしょう。でも、それは今までやっていなかったことの裏返し。本来はもっと政治に向き合い、今、何が問題で、日本の社会をどうしていけばいいのかを考えるのが不可欠ですが、「国民はそんなこと考えなくていい、思考停止していてくれ」という姿勢が、これまでの長い間の政治風土や今の政権運営から透けて見える。企業もしかりです。
常見:そこなんです。「社畜」は「会社に飼い慣らされて思考停止した人たち」という意味だったんですが、この20年で、職場が分断され、働く人たちが手をつなげなくなったばかりか、社会全体が「思考停止国家」になってしまった。ブラックバイト問題に関していうと、学業阻害論とか、学生の人権問題もそうなんですが、そこで可視化されるのは「労働者ってやっぱり弱いんだよね」ということなのです。
アルバイトをしている瞬間、労働者のはずなんですよ。それが勝手にシフトを組まれるだなんだっていうことというのは、正社員が総合職という名の下で何でもやらされているのとまったく構造が同じだと思うんですよ。
労働者が互いに手を取りながら「権利」を共有する必要性
山本:常見さんは連合に何を期待しますか?
常見:そもそも論ですが、私は、究極「労組」という名前じゃなくてもいいと思うんですよ。労組でなくてもいいと思います。やっぱり労働者が「権利」ということだとかに意識して、手をつなぐということが大事なので。実際、これまでの枠を超えた労組も立ち上がっています。
そのうえで、連合に求めるものっていうのは、やっぱりいわゆる労働者の代弁者であってほしいということですね。現状の労働組合が、御用組合だとしたならば、もっといい御用組合になればいいと思うのです。それは何かというと、「経営者さん、こうやったほうがうちの会社儲かりまっせ」と。「こういう働き方をしたほうが人が集まりまっせ」とか、「こういう働き方をしたほうがパフォーマンス良くなります」ということを提案する組織であってほしいんですよ、例えば企業内の労働組合は。
神津:すべてとは言えないですが、そこは提案できていると思います。そして、それがすごく大事だというのはおっしゃるとおりです。もともと日本人が持っている働き方の良さは、言われたことをただこなすということに留まらないで、前向きの意識を持って働くことなのだということについて世の中全体がもっと財産として共有していくべきだと私は思っています。
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