伊藤忠は「カラ売り屋」にヒステリックすぎる

露呈してしまった日本市場の"田舎っぺ"体質

米国でカラ売りファンドの存在が一躍脚光を浴びたのは、1985年以来、「キニコス・アソシエイツ」というカラ売り専業のヘッジファンドを運営しているジェームズ・チェイノスの功績だ。

当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったエンロンの財務諸表を穴の開くほど読み返し、異様に低い総資本利益率、決算書の脚注にあるエンロンの上級幹部と同社の意味不明な取引などから、マーク・トゥ・マーケット会計(※保有資産を時価評価すること)を悪用したデリバティブ取引による収益のかさ上げやSPE(特別目的組合)を使った粉飾決算を見破り、2001年のエンロン事件につながった。

リーマンショックを予言したカラ売りファンド

介護用ロボを作るサイバーダインもカラ売りファンドの標的となった(撮影:風間仁一郎)

その後、チェイノスは2007年に、格付け会社のムーディーズに対して「彼らはもはや中立な格付け会社ではなく、ストラクチャード・ファイナンス(証券化)の会社である。以前は審判員だったが、今はヤンキースのヘルメットをかぶってバットを振っている。ムーディーズがサブプライムローンを組み込んだ証券に与えている格付けは高すぎる。もしこれらの証券が債務不履行となって、投資家が損を蒙れば、ムーディーズは投資家に訴えられる可能性がある。また、いったん格付けが信用を失うと、格付けビジネスが減り、手数料引下げ競争も起きる」と述べ、カラ売りをすると同時に、サブプライムローン危機を予言した。

さらに、オーストラリアの投資銀行マッコーリーに対し、「世界中で空港や高速道路を買収しているが、高値づかみをしている。それらの資産から生じるキャッシュフローで買収資金を賄えていない」としてカラ売りを実施。

急成長中だった中国についても「国の指導者の発想がまず成長率ありき。地方の党幹部らは、高い成長率を上げないと出世できないので、数字を誤魔化して報告している。大きな問題は不動産への過剰投資とシャドー・バンキング(影の銀行業)だ」と指摘した。

チェイノスは国が発表した成長率を鵜呑みせず、電力や石炭の消費量、素材価格動向などを見て、実際の成長率は政府発表の数字よりかなり低いことを見抜き、米国に上場している中国企業などをカラ売りした。

チェイノスの見立てはどうだったのか。その後、ムーディーズとマッコーリーは、2007年に発生したサブプライムローン危機と翌年のリーマン・ショックで株価を大きく下げ、中国株は2015年8月に大暴落した。

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