伊藤忠は「カラ売り屋」にヒステリックすぎる 露呈してしまった日本市場の"田舎っぺ"体質

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ここ数年、米国では中国企業の株のカラ売りがブームだった。「マディー・ウォーターズ・リサーチ」、「ゴッサム・シティ・リサーチ」、「グラウカス」、今般サイバーダイン株をカラ売りした「シトロン・リサーチ」など、数多くのカラ売りファンドが米国や香港に上場している中国企業の株をカラ売りし、利益を上げた。

カラ売りファンドの役割

「伊藤忠商事はグラウカスと真剣に議論を交わすべきだ」と黒木氏は語る(撮影:梅谷秀司)

多くの中国企業が杜撰な会計処理や粉飾による利益のかさ上げを行っていたので、カラ売りファンドの活動で、こうした企業の実態が一般の投資家の目に正しく示され、投資家被害も減った。

カラ売りファンドはその専門性ゆえに比較的小規模なものが多く、1社だけで相場を動かすことはできない。裏付けのあるきちんとした主張をすることで、他のカラ売りファンドや一般投資家に同調してもらう必要がある。

チェイノスがエンロンを売り倒すことができたのは、有力経済誌『フォーチュン』が意見を支持し、米ボストンのヘッジファンド「ハイフィールズ・キャピタル・マネジメント」のパートナー、リチャード・グラブマンも売りの側に加わったからだ。

チェイノスは「Bears in Hibernation Conference」(冬眠している熊たちの会議、Bearは相場の下落を意味する語)という投資家との会合を定期的に開いて、関係を築いている。質の悪いリサーチしかできないカラ売りファンドは淘汰されてゆくし、根拠のない流言飛語を流せば、法律違反に問われたり、損害賠償を求められたりする。

もちろんカラ売りファンドの意見が間違っていることもある。チェイノス自身、1990年代にインターネットサービス会社AOLの株をカラ売りして失敗し、「インターネットの世界がこれほど重要になるとは考えていなかった」と述懐している。また、それまできちんとしたリサーチをしていたファンドが、なぜか勇み足のような荒っぽい主張をし、首を傾げさせられるケースもある。

グラウカスに対するメディアを含めた日本側の反応を見ていると、日本というのはずいぶん遅れた市場だなとあらためて感じる。これは日本初のアクティビスト・ファンドの創業者、村上世彰氏が2006年にインサイダー取引で逮捕されたときにも感じた違和感である。

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