コーヒーで「健康になる人」は遺伝子が違う! カギを握るのはカフェイン代謝

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ひょっとするとコーヒーと心疾患の関係も、人によって違うのではないかと、エルソヘミは考えた。そこで目をつけたのが「CYP1A2」という遺伝子多型(シトクロムP450という遺伝子の塩基配列の1タイプ)だ。この遺伝子は、カフェインを分解するスピードを決める酵素(やはりCYP1A2と呼ばれる)に影響を与える。

肝臓にCYP1A2を持つ人は、カフェインを素早く代謝できる。両親それぞれから代謝のスピードが速い遺伝子多型を受け継いだ人(高活性型)は、代謝のスピードが遅い遺伝子多型を1つまたは2つ受け継いだ人(低活性型)よりも、カフェインの代謝が4倍速い。

エルソヘミの研究チームは、米国立衛生研究所(NIH)の助成を受け、成人4000人(うち約2000人は心筋梗塞の経験者)の遺伝子とカフェイン消費量の関係を調べた。その結果、1日4杯以上コーヒーを飲む人は、心筋梗塞を起こすリスクが36%上昇するらしいことがわかった。

しかし驚きの発見があったのは、その結果をカフェイン代謝の高活性型と低活性型にわけて見たときだ。コーヒーの大量摂取が心筋梗塞のリスク上昇につながるのは、低活性型の人だけだったのだ。

「被験者全体でリスクが上昇しているように見えたのは、実は低活性型の人における大幅なリスク上昇が原因だった」とエルソヘミは語る。

高活性型と低活性型に大きな違い

高活性型の反応は正反対だった。彼らが毎日コーヒーを1〜3杯飲むと、心筋梗塞のリスクは大幅に低下した。カフェイン代謝が速い人たちにとって、コーヒーを飲むのは「体にいい」のだ。

低活性型の人は、カフェインが分解されずに体内に残っている時間が長いから、心筋梗塞を引き起こすチャンスも長いのだと、エルソヘミは考えている。一方、高活性型の人は、カフェインが体内から早く排出されるから、抗酸化物質やポリフェノールなどコーヒーに含まれる健康にいい物質が(カフェインの副作用なしで)作用する。

最近の研究も、同様の結果を示しているようだ。イタリアの研究者チームが、カフェイン代謝の高活性型と低活性型あわせて553人の血圧を調べた。その結果、コーヒーと高血圧の関係も被験者の遺伝子によって変わることがわかった。

カフェイン代謝の低活性型が、コーヒーを大量(あるいはそこそこの量)飲むと、高血圧になる可能性が大幅に上昇した。逆に高活性型の人では、コーヒーの摂取量が増えると、高血圧のリスクが低下した。

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