「ご縁」という日本語に込められた深い意味 どれ一つ取ってみても、当たり前ではない

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その中でも、最も驚くべきことは、旅の終着点であったカリフォルニア州サンフランシスコで、バークレーという街を訪問し、そこで後にアメリカの父として慕うようになった方と出会い、またそこで見学した大学院で自分が勉強することになったことです。

このような不可思議(思いはかることも、言語でも表現できないこと)な出会いや状況を体験して、本当に有難いという感謝の思いから、自然と「ご縁」という言葉が口から溢れ出るようになりました。

それ以来、私は日常生活の中で、何か有難い出会い、再会、状況などに直面する度に、この「ご縁」という言葉を使って感謝の気持ちを表すようになりました。もう、自分にとっては口癖のようなものです。

「ご縁」が含むもの

通常、私たちが使う「ご縁」の意味は、出会い、機会、関係などを意味する場合がほとんどです。

そういう意味では、「ご縁」は「meeting」「encountering」「chance」「condition」「relationship」というような英単語を当てはめることができるかもしれません。

実際、初めてお会いした方との別れ際に「この度は本当によいご縁でした」という気持ちを英語で伝えるときには、よく「It was very nice meeting you!」というひと言と握手を交わします。これは、英会話の参考書やネイティブの方の実際の会話を見習って、私自身もよく使用する英会話表現の一つです。

しかし、私はこの表現がどうも自分の意図する「ご縁」の英語として考えたとき、しっくりこないのです。

相手との出会いだけに感謝するのであれば、問題のない表現かもしれません。しかし、私たちが意図する「ご縁」は、ただ出会いや機会そのものを意味するのではないと思うのです。おそらく、私たちは出会いや機会そのものというより、結果としてそれらをもたらしてくれた不可思議なはたらきかけ、もしくは力を含めて「ご縁」と呼び、感謝をしているはずです。つまり、出会いや機会を結果として成り立たせている背景をも、大事にしているということです。

ここに表面や結果だけにとらわれるのではなく、背景にある目には見えないものを観るという、日本の精神文化の深さが感じられます。

余談になりますが、そういう意味では、英語にはこのような不可思議なはたらきかけというものを表現する言葉がないのかもしれません。だからこそ、その穴埋めとして「神」というあらゆるものを超越した存在を置き、神の力としてその不可思議な現実を納得させる英語表現にせざるを得ないのでしょう。

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