日本株「みせかけの好調」の後に来るもの 17年ぶりの「異様な高値」が示す真実

拡大
縮小

3つの指標とは「NT倍率の拡大」「日経平均ボラティリティ・インデックス(VI)の低下」「ドル建て日経平均の高値更新」である。今後のマーケットをみるうえでのポイントになると見る。

まずは、NT倍率の拡大から確認したい。

NT倍率は、文字通り、日経平均(N)をTOPIX(T)で割ったものだ。8月12日現在では12.78。細かい説明は省略するが、この倍率で大型株優勢なのか、中小型株が優勢なのかを判断することができる。このNT倍率が1999年以来、約17年ぶりの高水準まで上昇している。背景には、日銀によるETF買入があるのだが、ロジックを説明しよう。

日銀が買うと、なぜNT倍率は拡大するのか

拡大する理由は、TOPIXが「時価総額型指数」(正式には浮動株基準株価指数)、日経平均が「単純平均株価指数」であるためだ。例えば、トヨタ自動車とファーストリテイリング(ファストリ)はTOPIXにも日経平均にも含まれる。

トヨタはTOPIXの構成比率で1位、ファストリは日経平均の構成比率で1位。トヨタの構成比率を見るとTOPIXは3.90%、日経平均は  1.38%と合計5.28%だ。

一方、ファストリは、TOPIXが0.32%に過ぎないが、日経平均はなんと8.79%で合計9.12%となる(比率は12日時点)。TOPIXと日経平均を機械的に200億円購入したとしても、これだけ構成比率が違うと、ファストリにより多くの投資資金が流入する格好となる。また、日銀が機械的にTOPIXや日経平均を購入することがわかっていることから、ファストリなど日経平均の構成比率が高い銘柄に先回り的な買いが入りやすくなっている。これがNT倍率拡大の要因だ。

では、二つ目の日経平均VIの低下とは何を意味するのか?

これは、日経平均オプション取引などの数値を用いて算出する先行き(1カ月先)の不透明感の高さを数値化したものだ。「ボラティティ」と一言で表現されることもある。

簡単に言うと、30pより上だと先行き不透明感が高く、日経平均は乱高下しやすい。一方、20pぐらいであれば、先行きを楽観視した投資家が多く、日経平均は安定した推移となりやすいといった具合だ。

オプションのボリュームなど、細かいことは省略するが、この日経VIが足元で急低下している。7月29日に30p台だったが、会合内容が伝わると一気に26p台まで低下。その後もじりじりと低下し、12日にはついに18.45pと今年最低水準となっている。

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