iPhoneも使用、でも誰も知らないアルミの謎 需要は年5~7%の高成長、長期では供給リスクも

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また、インドのナルコ社、サウジのマアーデン社、ドバイのデュバル社など、アジア・中東の政府系企業は石炭・ガス供給能力を武器に大型増産プロジェクトを誘致している。さらに。中国も、第12次5カ年計画において採炭・発電・アルミ製錬の一体運営による、コスト引き下げや、フライアッシュ (石炭灰)からアルミナを回収する取組みを進めていると伝えられる。今後のアルミ業界は川上まで含めた勢力図の変化が予想される。

近年、高騰を続けた国際商品市場において、アルミ価格の上昇は相対的に低位にとどまった。だが、これはアルミが供給制約のない商品ととらえられていたゆえのことである。しかし、今後も順調な供給拡大を持続できるかについては不透明さが残り、今後生産が伸びることが期待されるロシア・中近東は、原油やガスと同じく地政学的リスクを考えざるをえない。

足元では大量在庫と供給過剰に陥っている状況であるが、需要は今後も年率5~7%の高成長を維持する見込みであり、アルミ製錬所新設とのタイムラグによっては、予期せぬ供給不足が発生するリスクもある。また、安定的な電力・原材料確保の課題がアルミの供給制約・コスト上昇要因として浮上しつつある。これらのことから、長期的なアルミ相場については供給リスクを織り込む形で上昇基調をたどっていく蓋然性が高い。

(撮影:今井 康一)

山際 真義 住友商事 軽金属事業部地金チーム長

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やまぎわ しんぎ

やまぎわ しんぎ 住友商事 軽金属事業部 地金チーム長。1996年東京工業大学経営工学科卒、住友商事入社。アルミのほか貴金属、石油、天然ガス、農産品など、これまで多様な市況商品のトレードを担当。6年間のロンドン駐在時にはSumitomo Corporation Global Commodities Ltdの設立に携わるなど、
欧州でのエネルギートレード部隊の立ち上げに従事した。2011年4月に帰国し、現職。

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