「G20」後は円安、円高のどちらに動くか ディーラー歴20年の達人が読む為替
こんな歴史がバレンタインデーにはあるが、昨年の記憶も新しい。日本銀行は追加緩和とともに「中期的な物価安定の理解」から「中期的な物価安定の目途」に一歩踏み込んだ表現を掲げた。これは事実上のインフレターゲットであるという解釈が広がり、日銀は1%が見通せるようになるまで、実質的な資産買入れ等の措置により、「強力に金融緩和を推進する」と一歩踏み込んだ。
さて今年のバレンタインデー前後でも、何が起こるか期待していたが、期待にたがわず?ネタはでてきた。まず12日。G7は為替に関する声明を発表。「G7は我々が長年コミットしている、為替レートは、市場において決定されるべきこと、そして為替市場における行動に関して緊密に協議するべきことを再確認する。為替レートを目標にしないことを再確認する」。
G7緊急声明はG20会議前の新興国向けの地ならし?
為替は市場に任せるという原則論を確認したに過ぎないが、なぜこの時期、G7の緊急声明が出てくるのだろうか。
一部の欧州諸国に、明らかにアベノミクスによる円安誘導的な動きにいら立ちを持っている国がいる。おそらくフランスあたりだろうが、かつて1ユーロ=169円、1.6ドルのころのユーロに比べれば、いまはほぼ平均値あたりにいると思うのだが。そこらへんはドイツはわかっているらしく、正論を述べている。
イングランドのキングBOE総裁やカナダのカーニーBOC総裁も、「G7は日本を名指ししたものではない。日本のデフレ脱却の政策を支持する」といった好意的な発言をしている。「頼みの」米国も、ブレイナード米財務次官が、日本の成長支援・デフレ脱却に向けた措置を支持すると発言。沈黙を守っていた米国が発言するということは「90~95円付近の円安は容認する」というメッセージなのかもしれない。
G7は、新興国には為替の柔軟性を求めてきた。今回15,16日のG20 を前にして、G7として意見を統一しておきたいという意思が働いた可能性もある。G20 の場で、G7から新興国に為替の柔軟性を求めておきながら、そこで新興国サイドから日本政府や円の対応に物言いがついたら、G20の会議が踊ってしまうのだ。
一方、新興国サイドではG20の議長国であるロシアの財務長官が「円は明らかに過大評価されてきた。状況を監視するべき。ロシアは日本が介入をしていないことが重要と認識している」と日本に好意的なコメントをだしている。
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