「天皇の生前退位」知っておきたい基本の基本 「なるほど、そういうことか!」Q&Aで解説

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Q15. いちばん最後に「生前退位」したのはどの天皇ですか?

最後に生前に退位した天皇は、1817年の第119代「光格(こうかく)天皇」です。退位後に最後に院政を行ったのも、この光格上皇でした。

もっとも、この時代は政治の実権は江戸幕府にあったため、実質的に政治を行ったわけではありません。

日本史を知れば「ニュース」が深く理解できる

なぜいまの天皇は「生前退位」できないのでしょうか?(写真:カツ/PIXTA)

Q16.では、なぜいまの天皇は「生前退位」できないのでしょうか?

明治になって憲法(大日本帝国憲法)が制定されると、「一世一元」制が基本となり、原則的に「生前退位」「生前譲位」はできないことになりました。「天皇と上皇」という2人の権力が並び立つことを避ける意図があったともいわれます。

そのため、「大正天皇」は晩年には病で実質的に政務がとれない状況になりましたが、退位はせず、のちの「昭和天皇」が「摂政宮」となってすべての政務を代行しました。

生前退位ができない状態は戦後も受け継がれ、昭和天皇も87歳で亡くなるまで天皇の位にありました。いまの天皇陛下も82歳を迎えています。

じつは意外と知られていないのですが、憲法に規定されている「天皇の国事行為」事項はとても多く、したがって天皇は超多忙です。現在の陛下のお年は、一般の人であればすでに現役を引退している年代ともいえます。

現代は高齢化時代。生前退位を想定していない皇室典範の規定も、再検討が必要な時期に来ているのかもしれません。

現代のニュースを深く、自分の頭で考えるために、ぜひ知っておかなければならないのが「日本史」の知識です。

日本の長い歴史の中で、天皇がどのような存在で、どんな役割を果たしてきたのか。皇位はどう受け継がれてきたのか。「日本史」を知ることで、ニュースをより深く理解することができます。

日本史の知識は、日々変動する時事的なニュースと違って、一度、身に付ければ、生涯、いろいろな局面で役立つものです。ぜひ「日本史」を学び直すことで、「自分の頭で深くニュースを見る目」を養ってください。

山岸 良二 歴史家・昭和女子大学講師・東邦大学付属東邦中高等学校非常勤講師

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やまぎし りょうじ / Ryoji Yamagishi

昭和女子大学講師、東邦大学付属東邦中高等学校非常勤講師、習志野市文化財審議会会長。1951年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了。専門は日本考古学。日本考古学協会全国理事を長年、務める。NHKラジオ「教養日本史・原始編」、NHKテレビ「週刊ブックレビュー」、日本テレビ「世界一受けたい授業」出演や全国での講演等で考古学の啓蒙に努め、近年は地元習志野市に縁の「日本騎兵の父・秋山好古大将」関係の講演も多い。『新版 入門者のための考古学教室』『日本考古学の現在』(共に、同成社)、『日曜日の考古学』(東京堂出版)、『古代史の謎はどこまで解けたのか』(PHP新書)など多数の著書がある。

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