安倍政権は本当に財政健全化できるのか 2013年度予算は辛うじて乗り切ったが…

拡大
縮小

物価上昇で金利が上がれば、国債利払いも膨張

そう考えると、年央に公表される財政健全化計画では、累増する国債の利払い費に今後どう対応していくかも、1つの大きな論点になりそうだ。13年度予算では、全歳出の4分の1を占める国債費の算定に当たって、積算金利を従来の2%から1.8%へと5年ぶりに引き下げ、過去最低水準とした。金利の実勢値に合わせて下方修正したものだが、これによって国債費の伸びが3000億円弱(12年度当初予算から約1000億円減)に抑えられたのも事実だ。

一方で、安倍政権は日本銀行との共同声明に物価上昇率2%の目標を組み込み、インフレ期待を起こそうとしている。もくろみどおり物価が上昇すれば、金利も上がる。今は歴史的な超低金利の下、国債金利は低位安定しているが、それでも国債の利払い費はすでに全歳出の1割に到達。アベノミクスによって今後、金利が想定を上回る上昇に転じたとしたら、日本の財政は一段と苦しい状況に追いやられる。

頼みの綱は消費増税、経済対策と減税意義が問われる

つまり、もはや頼みの綱は消費増税しかないということだ。消費税率を1%引き上げることによる増収効果は、ざっと2.5兆円超。14年4月から8%への3%増税で、7.5~8兆円の財政健全化インパクトだ。13年度税制改正大綱で示された所得税の最高税率引き上げや相続税の課税ベース拡大による増収効果(それぞれ590億円、2570億円程度)とは、まさにケタが違う。

しかし、景気が上向かない状況で消費増税に向かえば、政権支持率を大きく失いかねない。夏に参院選を控えていることもあって、景気回復は安倍政権の最優先課題。だからこそ、緊急経済対策で大型の財政出動を行い、13年度税制改正大綱でも各種の法人減税や、消費増税に伴う激変緩和措置として住宅ローン減税の拡充を盛り込み、総額2400億円の減税を先行させた。

13年度予算案の税収の前提となった政府の経済成長率は、名目で2.7%と民間予想を上回る数値。だが、この強気の経済見通しをもってしても、経済成長による税収増の効果は1.2兆円程度でしかない。さらに、これまでに行った法人税率引き下げと、緊急経済対策に伴う減税に食われ、税収増の手のこりは5000億円弱にまで縮んでしまう。

ここまでやって、増税できないとなったら、それこそ大問題だろう。

長谷川 高宏 東洋経済 記者
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT