JR常磐線、5年4カ月ぶりの復旧で見えた現実 「原発事故」避難解除!全線運行へ一歩だが…

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原ノ町駅前で発車を待つ竜田駅行きの常磐線代行バス。今回より、小高駅へ立ち寄ることになった

2015年1月31日から運行されている竜田~原ノ町間の列車代行バスの初日の模様は、以前の私の記事、「原発被災地の『鉄道代替輸送』に足りないもの」で取材、考察した。

その後、この代行バスを2回ほど利用する機会があったが、いずれも乗客は少なく、今回、7月12日の早朝に原ノ町駅で見かけた竜田駅行きも、利用は4人だけであった。なお、運転本数は2往復のままで、小高~原ノ町間復旧とともに、小高駅へ立ち寄るようになったのが変化である。利用客が限られていることが察せられる。その他の公共交通機関の状況は、1年半前と、ほとんど変わっていない。

小高~原ノ町間の常磐線列車の設定本数は9往復で、下り17本・上り18本ある原ノ町~相馬間とは、やはり違いがある。始発は上下とも7時台、最終は19~20時台だ。通勤通学など、ぎりぎり生活に使える時間帯か。これも「帰還する住民は限られる」という沿線地域の実態を予測した結果であろう。

「孤立」解消時にどう変わるか

原ノ町駅では平日朝、高校生の下車が多い。2両編成だと相当、混雑する

一つの転機として予想されるのは、2016年12月に予定されている、相馬~浜吉田間の運転再開だ。これにより、小高~仙台間(2017年3月には浪江~仙台間)の直通運転が可能となる。長年にわたる、原ノ町周辺の常磐線の孤立状態が解消されるのだ。いわき・東京方面への直通は当分先になるが、これによって、東北の中心都市・仙台への鉄道の利便性は格段に高まるはずである。

その際、望まれる施策はいくつかあるが、沿線住民の利便と、広域輸送に配慮したものであってほしい。やはり、人の流動が起きれば地域が活性化するものだ。

具体的にはまず、原ノ町以南でもICカード「Suica」が、暫定的でもよいから利用できるようになってほしいところ。常磐線では2009年より原ノ町~岩沼(仙台)間での、Suica利用が可能となっているが、このまま復旧すると、磐城太田・小高・浪江の3駅のみが「浮く」ことになる。

また、原ノ町~仙台間に快速など、何らかの「速達列車」ができればよいと思う。震災前は特急4往復が運転されており、同区間の所要時間は1時間を切っていた。普通だと震災前で1時間20分程度だったが、現在、走っている高速バスでは、特急便でも約1時間30分(急行便だと約2時間)かかる。運賃はJR1280円(震災前)に対し、バス1500円(特急便)。特急料金不要の快速なら対抗可能だ。お互いの切磋琢磨が期待できそうである。

対東京方面では、以前も述べたが、福島~南相馬・相馬間のバスと新幹線との連携が必要だろう。原ノ町~仙台~東京ルートは、新幹線の効果で、所要時間なら実は互角にできそう(「はやぶさ」利用で約3時間)だが、運賃・料金の安さでは福島接続のバスルートに軍配が上がる。これも、復興までの一時的なものとしてもいいので、公共交通機関同士、もっと手を結んでほしい。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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