JR常磐線、5年4カ月ぶりの復旧で見えた現実 「原発事故」避難解除!全線運行へ一歩だが…

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記念式典が終わると、列車の利用客は格段に減った。旗指し物は伝統の祭「相馬野馬追」の記念で、観光客誘致も図る

式典などが終わり小高駅前にも静けさが戻ると、各列車の利用者はまばらになった。私が利用し、見た範囲においては、2両編成の列車1本に10人も乗っていない状況である。早く町の復興に取り組めた原ノ町~相馬間との差は、同じ市内とはいえ大きい。

どこまで復興を加速できるか。それ以前に住民が安心して暮らせる町に戻せるかどうか。鉄道の使命が果たせるかどうかは、そこにかかっているだろう。

まさに地域あっての鉄道だ。私が乗り合わせた列車では、車掌が「地域の皆さんと共に、JR東日本(常磐線)も歩む」という主旨の放送を流し、車内には、地元の小学生が描いた鉄道の絵が一面に飾られていた。展示は9月30日まで、とのことである。

原ノ町~小高間を往復して感じるのは、レール、枕木、架線柱などの新しさである。内陸部なので津波は受けていないが、地震で破壊され復旧工事をしたのだから、当然と言えば当然なのだが、「除染」の意味合いもあるのかと思う。途中駅の磐城太田付近までは、作付けされ、青々とした稲が育っている田んぼもあるが、磐城太田を過ぎると田畑は皆、手つかずの状態になり、これまで置かれてきた異常な状態を分かりやすく示してくれる。

駅には空間線量計が

小高駅待合室には、放射線量を測定する計器を設置

小高駅では、3線あるうちの中央の線路に接して2両分の仮設ホームを設け、乗降を扱っていた。信号設備上、その中線でしか相馬方面への折返しができない。しかし、残る2線も復旧工事は終わっている。2017年3月に予定されている浪江~小高間の運転再開に向け、ひと足先にもう準備はできているのだ。磐城太田、小高の両駅には、空間線量計も設置されていた。

残る原発事故関連の不通区間のうち、竜田~富岡間が2017年中、富岡~浪江間が2020年3月までに運転を再開させる計画で、2016年中に運転を再開する相馬~浜吉田間と合わせて、常磐線が全線復旧する。

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