韓国に「朝鮮族との融合」という覚悟はあるか 今や食堂や介護現場で必要不可欠な存在に
当時、韓国にやってきた朝鮮族の多くは農作業をしていた人たちで、気候も生活も厳しかったため、韓国に行けば「一攫千金も夢ではない」という思いが広がったという。また、望郷の念を募らせて故郷に戻りたいという一世や子どもの教育のために韓国に渡る決心をした人も多かったそうだ。しかし、ビザの取得は今よりさらに難しかった。親戚を訪ねるための訪問ビザは有効期間が3カ月で、そのビザも韓国に親戚がいることを証明するための書類が何種類もあるなどで手続きは煩雑を極めた。
そんな背景もあり、2000年代初めまでは中国人も合わせて3万人ほどしかいなかったが、2002年に入ると激増した。これは、韓国が通貨危機でIMFに救済を求めた後(1998年)、第2の建国を謳い経済回復を目指す中で、雇用という点からビザを緩和したためだ。2002年、在留する中国人と朝鮮族は合わせて8万人を超え、2005年には10万人を突破。以降は右肩上がりに増え続け、今や一大コミュニティを築くまでに膨らんだ。
朝鮮族の人たちは韓国で主に工事現場や食堂での仕事に就いていて、今では病院の24時間介護や住み込みの家政婦にまでその職域は広がっている。特に病院の介護のシーンでは朝鮮族の人材抜きには考えられない状況になりつつある。
韓国人は朝鮮人を軽く見ている
ソウルのある老人ホームに知り合いを訪ねた時のことだ。そこでは8人部屋にいた介護人7人のうち5人が朝鮮族で、ホーム全体でもおよそ80%を占めた。韓国人の介護人は、「ここでは私たち韓国人がマイノリティで、どこで働いているのかわからなくなる時がある」と苦笑いする。その部屋にいた吉林省から来た朝鮮族の金さん(57歳)は夫と息子夫婦とともに10年前に韓国に来た。
「中国で働いてもそんなには稼げないし、将来のことも考えて言葉も通じる韓国に来ることを決めた」
金さんの夫と息子は工事現場で働き、お嫁さんは食堂で働いているという。金さんの収入はひと月およそ200万ウォン(約18万円)を超える。収入はそれほど悪くないが、と前置きしてからこうこぼした。
「最初についた患者の家族からは韓国人の介護人がとっていた休暇をもらえなかった。韓国人は朝鮮族を軽く見ているから、そうやって差別する。私たちがいなくなったら介護する人がいなくなって困るのは自分たちなのにこういう差別はずっと感じる……」
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