北朝鮮の農業に訪れた「劇的ハイテク化」の波 が、本格的な食糧危機脱出には程遠く…

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平壌近郊、柳所野菜専門協同農場は今年、良好な気象条件に恵まれている

6月も下旬となり、北朝鮮では田植えをはじめ農作物の種付けがほぼ終わったこともあり、北朝鮮メディアでは農業に関した報道が相次いでいる。日本をはじめ、海外では「北朝鮮=食糧難」というイメージが抜きがたいほど植え付けられているが、穀物生産量など、今年の北朝鮮の農業・食糧事情は実際にどうなのか。

国連食糧農業機関(FAO)は6月上旬に発表した「Food Outlook June 2016」報告書の中で、「北朝鮮の今年(糧穀年度2015年11月〜16年10月)のコメ生産量を160万トン(精穀後基準)と予測した。これは、精穀後の基準では前年比30万トン増、精穀前基準では同190万トン増と、まずまずの豊作ということになる。

「FAOの予測を超える」と見る専門家も

また、北朝鮮では主穀と同等の扱いであるトウモロコシの生産量も、FAOは前年250万トンとほぼ同水準の生産量を予測している。これは、今年4月から降雨量が適切な水準だったことなど、気象条件がよいまま作物の種付け作業が終わったことを考慮しているようだ。

「FAOの予測を超えるのでは」と見る専門家もいる。北朝鮮の農業問題に精通する、韓国のGS&Jインスティテュート北韓(北朝鮮)東北アジア研究所のクォン・テジン所長は、米国VOA(Voice of America)放送のインタビューに答え、「コメの生産量は160万トンより多い、200万トンにまで増えることも考えられる」と述べた。クォン所長は、その理由として、良好な気象条件や水と肥料の十分な供給が見込めることを挙げている。

北朝鮮はこの数年間、4〜5月の田植えの時期に水不足に悩まされてきたが、今年はそれがなかった。今後、台風や大雨による自然災害などの悪条件がない、あるいは軽微であれば、FAOが出した予測はもちろん、クォン所長が言う200万トンも無理ではないという見方が支配的だ。

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