「円安・株高・債券安」の進行は終了へ 市場動向を読む(債券・金利)

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一方、日銀による財政ファイナンスとは、日銀資金による財政収支赤字の穴埋めのことにほかならない。古今東西、中央銀行による大規模な財政ファイナンスは財政インフレや通貨価値の下落を招くと言い伝えられてきた。とすると現下の市場の期待インフレ率は、脱デフレ期待と財政インフレ期待の胎動を受け、その分、以前よりも押し上げられていると捉える必要がある。

期待インフレ率の持ち直しで円安・株高に

このような期待インフレ率の持ち直しが、今般の各相場の基調反転の真因と考えられる。まずはインフレ期待の胎動が円安進行を促した。一般に、期待インフレ率が上昇すると当該通貨の購買力が低下し、減価するからである。次に、円安が株価の大幅高を演出した。

1ドル80円台後半への円急落は、輸入物価上昇による自己実現的な脱デフレに寄与するとともに、輸出企業の収益を確実に上振れさせるためである。ちなみに、輸出企業全体の採算円レートは1ドル82円程度(昨年1月調査)だ。

このようにして円安・株高が進行していくと、外需依存構造の日本経済の場合、企業・消費者心理の好転をも通じて生産・所得・支出の好循環メカニズムをやがて起動させる。そして、市場の景気回復期待を高める効果が見込まれる。

円安・株高の進行がそのような段階に至ると、往々にして景気悲観論が支配的な債券市場においてさえ、期待成長率がある程度は持ち直す。加えて、景気拡大に伴うデフレ・ギャップ(需要不足)の縮小観測が脱デフレ期待を喚起する。

今般は並行して財政インフレ期待もくすぶり始めた。そのため、デフレ期待が圧倒的に優勢だった債券市場でさえ、期待インフレ率が底打ちしたのだろう。円安を起点とするこのようなメカニズムの帰結として、今般、長期金利が円安・株高より半月ほど遅れて上昇傾向に転じたのである 。

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