提案力を徹底比較! ケース別・おススメ生命保険◆50代編(全4ケース)
ケース17◆50代後半【55歳・女・主婦(パート)】
主婦の保障はいくら必要か?
55歳主婦。夫は年収730万円の会社員。自分はパート勤めで年200万円の収入を得ている。一人息子は就職したが、当面は同居の予定。給料の一部を食費として家に入れてもらえば、負担は減る。持ち家のローン返済額は月17万円。支払いはあと10年残っている。現預金は800万円あり、さらに老後資金として毎月10万円ずつ貯金している。長男も独立し、近所の仲間と日本各地の温泉巡りでもしようかと考えている。保険については自分がどの程度必要かさっぱりわからない。何事も人任せという性格もあり、専門家のアドバイスが欲しいと思っている。
このケースの女性に高額の保障を提案してきた生保はほとんどなかった。AIGスターが「夫婦2人の老後の保障の準備が必要」という理由で、死亡保障10万ドルの終身保険を提案しているのが目立つ程度だ。太陽は定期付終身保険と医療保険を合わせて1100万円を提案しているが、これは70歳まで。それ以降は100万円の終身保険になる。逆に医療保険中心のプランを提案する生保はオリックス、明治安田、住友など15社中9社と過半を占める。
「家計に占める本人の収入の割合や、子どもが独立していることを考えると、保険で用意する死亡保障は基本的に不要」というのが、FP・三輪鉄郎氏の見立てだ。ただ、「夫の働く期間や退職金の金額にもよるが、住宅ローンが残っている点が気掛かり」として、住宅ローンの繰り上げ返済と老後資金のバランスよい準備を提案している。FP・和泉昭子氏もほぼ同じ意見だが、「一般的に女性は男性より長生きで、年下のケースも多いため、仮に保険に入るなら、妻一人期にも耐えられる医療と介護保障に重点を置くべき」。なお、この世代に女性疾病特約が必要かどうかは微妙だと言う。この特約を減らせば、保険料負担も少しは軽くなる。
一方、FP・井上信一氏は、「ライフステージのみを考えれば、死亡保障は整理資金プラスアルファ程度で十分だが、生活費推定額が月58万円と高額なこと、住宅ローンがあと10年続くことから計算すると、必要保障額が主婦の方にしては異例の高額」と指摘、このままでは単純計算すると死亡保障額は3800万円に膨らんでしまうと警鐘を鳴らす。「まずは貯蓄を増やす(生活費を削減する)ことで、必要保障額も老後資金不足も大幅に改善させるべき」(井上氏)。医療保険についても、井上氏は「病気やケガに対する備えは社会保障で約50%程度カバーされているので、入院日額5000円程度の医療保険で突発的な医療費支出に備えておけばよい」と言う。
では、どのようなプランがよいのだろうか。和泉氏は「住友はバランスは悪くないが、保険料が高い。アリコは生活習慣病保障がついている分、割高となっている」と指摘する。さらにAIGスターのドル建てのプランは「為替リスクがあるが、円高が進んだところで加入すれば、相対的に高い予定利率と為替差益の両方を取れるかもしれない」と言いつつも、「運用目的ならストレートに外債などに投資すればよく、さほど必要のない終身保険に加入することもないし、人任せの性格の女性が外貨運用に興味を持つかどうかも疑問」とやや手厳しい。
医療保障については、和泉氏は「オリックスで最低限の医療保障を得るか、ガン家系なら東京海上あんしんまたはアフラックのガン保険に入っておけばいいのでは。本人や家族へのカウンセリングなどのサポートを売りにしているガン保険なら心強い」と言う。三輪氏と井上氏もオリックスが割安との考えだ。いずれにせよ、各氏が重要と考えるのは「保険料を抑えて医療保障のみを保険で用意するというスタンス」(三輪氏)。人任せという性格だが、勧められるままに高額な保険料を支払い続けていると、長生きするにつれ家計が圧迫されるなど、本末転倒のおそれもある。