団塊世代が引退したら、日本は変わるのか? 藤原和博(その7)

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藤原:今、日本人は平均で1500万〜2000万円を残して死んでいるんですよね。「もしものときのため」というのがその理由だけど、その「もしも」は大半の人には起きない。

さらに面白いのは、平均的な日本人は、一生涯使う医療費の半分を死ぬ前の最後の2週間で使っている。要するに延命高度医療で。そういうおかしな話が変わるのかなと思うんだけど、なかなか変わらない。

藤原和博(ふじはら・かずひろ)
杉並区立和田中学校・前校長 
東京学芸大学客員教授

1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長 などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長 を務める。08~11年、橋下大阪府知事ならびに府教委の教育政策特別顧問。著書に、人生の教科書シリーズ、『リクルートという奇跡』『つなげる力』等。最新刊の『坂の上の坂』が10万部を超すベストセラーに。

渡邉:団塊の世代はもう変わらないと思いますよ。

藤原:あ、そう。では、日本の未来は決定だね。

渡邉:一番僕が驚いているのは、読売新聞の部数が10年前からほとんど変わっていないことなんですよ。これだけIT化で若い人が新聞を読まなくなっているのに、未だに1000万部。それはなぜかと言うと、団塊の世代が、死ぬまで新聞を読み続けないと気がすまない人たちだから。彼らはとにかく変わらないんですよ。

藤原:団塊の世代がそんなに動かないなら、日本の経済や社会も動かないかな。

――ただ、団塊の世代は、世の中の新しい動きに興味を持っているというか、若い人と関わりたがっている感じはしますよね。

藤原:学校支援地域本部やコミュニティスクールを見ていると、団塊の世代の人たちが関わっている例は多くある。たとえば、和田中の学校支援地域本部の本部長は、伊藤忠商事を57歳で辞めた人。彼は、友人に誘われたのがきっかけで和田中に来て、2年ぐらい算数おじさんをやったところ、お母さんたちに信頼されて、本部長になっちゃった。今では、本部長の仕事が生きがいになっている。

渡邉:要するに、団塊世代は猪突猛進で、ずっと仕事だけをしてきた世代。きっと趣味もない人たちなんでしょう。

藤原:そうかなあ。

渡邉:だから、おカネを使いたくても、使いようがないんじゃないですか。新しい趣味を始めるのは大変ですからね。

藤原:女の人の場合は、バッと仲間と海外旅行に行ったりする。ドイツの古城を巡る旅とか。それまでに育んだ地域社会や趣味の仲間がいるんですよ。

その点、男はけっこう悲惨で、そういうことができないんだよね。団体旅行となると、「なんで、俺が知らない奴と旅行に行かなきゃいけないんだ」みたいになってしまう。となると、やっぱり団塊の世代は寂しく死ぬってことなんでしょうか。

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