韓国ロッテの不正疑惑は、財閥の「慢性病」だ 創業者の長男vs次男の後継争いで問題が噴出

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3月末、東京・銀座にロッテ免税店がオープン。そのセレモニーに重光昭夫会長(中央)も参加した(撮影:大澤誠)

捜査のきっかけは、昭夫氏の兄である重光宏之氏(韓国名・シン・ドンジュ、62)が、骨肉の経営権争いの中で、「自らの正当性を立証する資料をつくり、その中に不正資金と思われるものがあった。それに検察が目を付けた」(前出の経済誌記者)と思われる。

だが、10日の家宅捜索以降、目立った進展はない。「無期限延期」としたホテルロッテの上場についても、その後、重光昭夫会長が「年内には」と発言するなど、ロッテとしては疑惑にはきちんと対応できるとの自信が垣間見える。

後継者問題でつまずく韓国財閥

ただ、こうした財閥に対する捜査は、韓国ではいわば恒例行事だ。

「韓国のいくつもの財閥が陥った困難な問題が、後継者問題で揉めている間に一挙に吹き出した」と、藤田東アジア研究所の藤田徹代表は見る。

商社マンとして韓国とのビジネス経験が豊富な藤田氏によれば、現代(ヒュンダイ)やサムスン、錦湖(クムホ)アシアナなど、韓国有名財閥はいずれも不正資金問題や後継者問題が起きたという。

現代グループの故・鄭周永(チョン・ジュヨン)氏、サムスングループの故・李秉喆(イ・ビョンチョル)氏など、「強力なオーナーがいた財閥ほど、後継者の資質に問題があって揉めている」(藤田氏)。ロッテグループだけの問題ではない、ということだ。

ロッテは、1940年代に日本へ来た重光武雄氏が日本で創業。1965年の日韓国交正常化の前後に韓国へ逆上陸。その後、日本人観光客にもおなじみのロッテ百貨店やロッテホテルなどの流通・観光事業や、化学事業などで成功を収めた。

特に日本の事業を長男・宏之氏、韓国の事業を次男・昭夫氏が担当、武雄氏がその上に立って経営を行うという企業統治がうまく回り、韓国でもトップクラスの財閥へと成長した経緯がある。

今回の家宅捜索を受け、権力闘争で敗れ、捲土重来を図る長男・宏之氏は、日本ロッテにも経営正常化のための緊急協議の場を設けるべき、とロッテグループに要求している。

実際に、上場を目指しているホテルロッテの株式の99%を日本側が保有している。韓国でのスキャンダルが日本ロッテの経営にも影響を及ぼす可能性も高まっている。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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