首相が押し切った「増税延期判断」の舞台裏 増税延期のシナリオは極秘裏に描かれた
[東京 6日 ロイター] - 消費増税延期の決断は「宰相か、ポピュリストか」と迫る盟友を押し切った安倍晋三首相の強い意思が働いた。「安倍一強」の構図が今後も政権運営を左右するのは必至の情勢で、今回見送った衆院解散をめぐる思惑を伴いながら、大きなうねりがどのような波紋を広げるのか、予断を許さない。
首相、歴訪後に増税延期を決断
こんなものを出すな──。洞爺湖サミット以来8年ぶりに、日本が主要国首脳会議の議長国となった伊勢志摩会合。初日の5月26日午前、財務省内に怒号が飛んだ。
声の主は、安倍首相の盟友・麻生太郎副総理兼財務相。引き金となったA4用紙4枚の参考データには、要約すれば原油や食料、素材価格などの下落幅に加え、新興国への投資伸び率の低迷ぶりが「リーマン・ショック級」との説明がある。
麻生氏は、国際会議の場での資料提示をやめるよう電信を送ったが、その助言が生かされた形跡はなかった。複数の政府関係者によると、増税延期のシナリオは極秘裏に描かれた。安倍政権発足から3年半。安倍首相は当初から「2度の増税はない」と周辺に漏らし、年初から増税延期の腹を固めていた。
問題だったのは「リーマン級の事態が生じない限り増税を実施する」と、繰り返してきた発言との整合性をどう取るか。