首相が押し切った「増税延期判断」の舞台裏 増税延期のシナリオは極秘裏に描かれた

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そこで、政府の意思決定機関である閣議を通さずにすむ国際会議を選んだ。その舞台をサミットにしようと画策したのは、首相側近の今井尚哉秘書官とされる。

首相は、5月初旬の欧州歴訪後に増税延期を最終決断した。今井秘書官は11日からリーマン資料の作成に着手し、最終案が印刷されたのは19日だったが、資料の存在は直前まで伏せられていたという。

曲折した増税延期の理由

参考資料に加えて、サミットの合間に示された首相の発言にも政府関係者の多くは首を傾げる。

サミット首脳宣言では、原案にあった「危機に陥るリスクに直面している」との記載を見送った。経済産業省を中心に、危機を前面に出した表現で国際協調を狙ったが、サミットで「『危機目前』とする日本の主張に同調したG7首脳はひとりもいなかった」(財務省幹部)ためだ。

結局、安倍首相は増税延期の理由について「新たな判断」と語った。サミット時、世界経済に関する首脳間の議論について「リーマン前に似ている」とする安倍首相の発言を紹介した世耕弘成官房副長官は31日に「そうした発言はなかった」と釈明し、発言そのものを打ち消した。

リーマン級資料の作成者を含むすべての情報について、菅義偉官房長官は箝口(かんこう)令を敷いたと、複数の政府関係者は打ち明ける。安倍首相が、政府・与党の限られた幹部に2年半の増税延期を伝えたのは、5月28日夜の首相公邸。その席で、麻生財務相は「(ポピュリズムに陥らず増税を唱える)宰相になるか、ポピュリストとなるかだ」と質したが、安倍首相は盟友の指摘に耳を傾けなかった。

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