「財政の下り坂」は2013年の大きな圧迫要因 景気・経済観測(米国)

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加えて、企業の先行き不透明感を一層増大させているのが、いわゆる「財政の崖」の問題である。実際、前述したISM製造業指数でも、「財政の崖」を控えて企業が慎重化しているとのコメントが目立った。

「財政の崖」とは、過去10年にわたって実施されてきたブッシュ減税の失効や、昨年夏に成立した「2011年財政管理法」で定められた歳出の一律カットなどによって、来年1月から大幅な財政緊縮策が実施されることをいう。

オバマ大統領と米議会は急な「崖」を回避するべく、対案となる財政再建策の協議を重ねているが、歳入拡大と歳出削減のバランスを巡って、民主・共和両党の対立が依然として続いている。

「財政の下り坂」は個人消費に下押し圧力

仮に、財政協議が合意に達し、ブッシュ減税の失効や歳出一律カットなどの急な「崖」が最終的に回避されたとしても、年明けの財政緊縮が完全になくなるわけではない点に注意する必要がある。

財政協議の俎上にのっていない、給与税減税の失効や、いわゆる「オバマケア」にともなう富裕層増税については、予定通り実施される可能性が高い。つまり、急な「崖」は避けられても、「財政の下り坂」が残存するということだ。その額は、GDP対比で約1%に相当する。個人消費は目下堅調に推移しているが、13年入り早々には大幅な下押し圧力が加わるとみられる。

年明け以降の米国景気を占う上では、家計がそうした負担増にどこまで耐えられるかが重要なポイントとなる。通常、増税などによる所得の減少に対して、家計は貯蓄率を引き下げることで、消費を維持しようとする。ただ、足元の貯蓄率が3%台前半と既に十分低い水準にある中、新たなショックを吸収する力はすでに乏しいとの見方もある。米国経済がこうした「財政の下り坂」を乗り切れるのか否かに注目だ。

服部 直樹 みずほ総合研究所エコノミスト

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はっとり なおき

2009年神戸大学経済学部卒業後、みずほ総合研究所入社。12年11月よりニューヨーク事務所駐在。米国担当エコノミストとして、雇用動向や個人消費、住宅市場、金融政策などの分析に従事。

 

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