「原発の優劣」が明らかになる新検査制度導入 規制委が常時立ち入り可能な検査へ抜本改革

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もっとも、検査制度のレベルアップのためには、電力会社などが検査への対応能力を常時整えておくとともに、検査官の人員増強や能力の向上も必要になる。この点では、最も進んでいる米国と比べて大きな開きがある。

金子氏によれば、米国の原子力規制委員会(NRC)では約4000人の職員のうち、常駐および各地区の事務所に所属する検査官が約1000人を占めている。これに対して日本では、原発の日常的な監視をする保安検査官が約110人、施設検査を担当する検査官を含めても総勢約160人にとどまる。現在のままでは新たな検査制度に対応できないため、「今後100人規模で検査官を増やしていきたい」と金子氏は説明する。

また、検査官になるための研修体制の整備も大きな課題だ。米国では検査官として現場で活動できるまでに約2年にわたる実務研修などが必要。直接比較はできないが、日本では資格取得に必要な基礎研修はわずか2週間。その後の応用研修や品質保証研修など一通りの研修を受けた場合でも研修期間は3~4カ月にとどまるという。

また、マンパワーに限りがあるため、原発1基に費やす検査時間も、日米間で大きな開きがある。

安全性の優劣を色分けして公表も

「検査制度の見直しに関する検討チーム」第1回会合。検査制度の改革は大きな課題だった

検査制度の充実は、電力会社にも安全性向上のための努力を促すことになる。米国の場合、電力会社が提出した安全分野ごとの「パフォーマンス指標」と検査結果に基づいて各原発の評価が決められる。ここで成績の悪かった原発については検査時間が大幅に長くなる。また、発電所の優劣の評価は色分けされてわかりやすい形で公表されることから、世間からの目にもさらされやすくなる。規制委は日本でも似たような手法を導入したい考えだ。

福島第一原子力発電所の事故では、当時の原子力規制当局や電力会社の「安全文化」の劣化の事実が明らかになり、世界最高水準を自負する「安全神話」が砂上の楼閣だったことが白日の下にさらされた。検査制度充実の道のりは容易ではないが、必要不可欠な取り組みであり、信頼回復のためにも規制側、事業者側双方の並大抵でない努力が求められている。 

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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