「原発の優劣」が明らかになる新検査制度導入 規制委が常時立ち入り可能な検査へ抜本改革

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IRRS報告書の指摘は、検査官のあり方についても手厳しかった。いわく、「要領およびガイダンスの大半がチェックリスト方式であり、検査官に個人としての評価または判断の自由度がほとんど残されていないことを確認した」「これが、規制委がこれまで検査官の初期の訓練を増やす必要性を感じてこなかった理由である可能性がある」。

IRRSのチームは、「原発の制御室内で数多くの警報が鳴っていたのに(注意を払わず)、検査官がチェックリストに規定されているということで、制御パネルの特定の指標の状態だけを確認していたことを目撃した」とも報告書で述べている。

こうした実態把握を踏まえ、報告書は「現在のチェックリスト方式の検査から変更する新しいアプローチが必要であろう」と結論づけている。

新制度では常時立ち入り検査も可能に

それでは規制委はどんな改革を目指しているのか。本誌の取材に応じた金子修一・原子力規制庁制度改正審議室統括調整官は、「もっぱら(原子炉の)保安規定などに書かれている項目をチェックするやり方を改めるとともに、電力会社などの安全性向上努力の取り組みが評価される検査制度に変えていきたい」と解説する。

「チェックリスト方式」と呼ばれるように、現在、3カ月に1度の頻度で行われている「保安検査」では、あらかじめチェックすべきテーマや項目が決まっており、基準を満たしているかどうかが原発ごとに判断される。たとえば、昨今話題の高速増殖炉「もんじゅ」は保安検査で重大な法令違反がたびたび見つかったことから、運転主体の変更を求める勧告が文部科学相宛に出された。しかし、もんじゅは例外中の例外の事例だった。

今後の検査手法について、金子氏は「(電力会社など)事業者の保安活動のすべてを監視評価の対象とする仕組みを導入したい」と検討チームの第1回会合で述べている。つまり、特定の項目のみならず、もっと幅広い視点で検査を実施する。

また、新たな検査制度ではこれまでとは異なり、法律に基づき常時立入検査できる「フリーアクセス」を可能にすることも盛り込む考えだ。これをとらえて、新聞各紙は「抜き打ち検査が可能に」と報じた。

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