なぜパリの男女は加齢しても「枯れない」のか 話題の「パリマダ」に学ぶ生涯恋愛現役の極意

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日本人とフランス人だけではなく、ほかの異国の人々の皮膚の隅々までを文字通り“穴のあくほど”観察してきたわたくしは、皮膚や顔の地の「若さ」では、圧倒的に日本人はじめアジア人種に軍配が上がると考えています。ですが、特にR45世代、更年期あたりを境目として、フランス人が断然「美しさ」で巻き返してくる様子を目の当たりにしました。

加齢をものともせず、老いてますます人生を謳歌する彼、彼女の生き方から「美しさ」への処方を導き出したのが、昨年刊行の『パリのマダムに生涯恋愛の秘訣を学ぶ』(以下『パリマダ』)でした。

美しさへの志向は、心豊かな生活を続けたいという素朴な気持ちに通じます。そして、心豊かな生活とは、愛――さまざまな人や物をめぐる愛――に恵まれた生活ではないでしょうか。フランス語で愛は「アムール」。放っておけば時間に押し流される人生を、フランス人はアムールによってせき止めようとするのです。

「アムール」は女性だけの努力では成立しない

ですから、アムールはときに世事や経済的合理性と対立しますし、ときに優位に立ちます。いまここにあるアムールに染まり、人生の機序(メカニズム)が忘却される。シェイクスピアが言うところの「この世の煩わしさ」を超越することでしょう。

それは人間関係や結婚をコスパで考えてしまう、「勝ち組と負け組」「成功と失敗」のように二分法で割り切ってしまう、あるいは目的意識や競争意識でガチガチに身動きが取れなくなっている、そんな現代日本社会の硬直性に風穴を空けることに通じます。“いまここを豊かに生きる”ことへのスクリプトを提案してみたいのです。

アムールに満たされるためのヒントは、「センシュアル」という考え方にあります。これは美しくある理(ことわり)の始原、『パリマダ』に描いたことの、もう一つのテーマでもあります。

『パリマダ』はわたくしにとって初めての恋愛本であり、日本の女性に目覚めていただいて世の中をアムール一色に染め上げてしまおう!という野望を展開したものでした。でも、アムールは女性だけの努力では成立しません。そして自己愛は、この世界のフリクションの温床でもあります。つまり、アムールは対象を求めているのです。

女性にとって、それは男性です。実際、多くの読者に「男性はなにをどう実践すればいいのだ?」と問いかけられました。そこでわたくしは、さらに1年を費やし、今春、パリマダ続編ともいうべき『生涯男性現役・男のセンシュアルエイジング入門』(ディスカヴァートゥエンティワン)を上梓いたしました。

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