電機・電力株下落が日生などを直撃 生保決算は株評価損で明暗

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一般企業の売上高に相当する保険料等収入は16グループ合計で増収となった。伸び率の大きいT&Dホールディングスや住友生命は、一時払い終身保険などの銀行窓販商品を大きく伸ばした。反面、明治安田生命は昨年度1年間に銀行窓販ルートで約2兆5000億円も売りさばいた一時払い終身の販売を抑制したことを主因に、保険料等収入を大きく減少させている。

厳しい局面続く三井、朝日

営業職員ルートでは、日生が4月から「主契約+特約」という従来の主力商品とは異なる単品販売の新商品「みらいのカタチ」を発売。新契約(死亡保障額)の伸びにつなげている。第一生命でも主力商品の「順風ライフ」が前年同期比で新規契約件数を伸長。明治安田や朝日は今期新たに介護保険を発売。「予想を上回る契約件数で推移している」(明治安田の松尾憲治社長)。

基礎利益は16グループ合計で微減の1兆円水準を確保した。大手生保では収益の源泉である保有契約高(死亡保障金額の合計)の減少に歯止めがかからないものの、医療などの「第3分野」を伸ばすことで基礎利益の減少を小幅に食い止めている。

ここ数年間に国内株式の運用残高を減らしてきたことから、保有株下落の影響は生保全体では吸収した。ただ、最大手の日生が電機や電力企業の株価下落で多額の有価証券評価損に見舞われたうえ、株価下落は内部留保を減らす形で三井や朝日など再建途上の生保会社の体力もそいでいる。

三井では、2000年代中盤に多く販売した変額年金の最低保証リスクに関する標準責任準備金の繰り入れ負担が15年度まで基礎利益を押し下げる要因としてのしかかる。朝日は11年度決算で体力温存策として基金(純資産の一部だが返済が必要な資金)の償却(返済)を繰り延べている。12年度も予断を許さない状況だ。
 

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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