日銀を縛るのは、愚策中の愚策
さて、その上で。
この自民党の政策パンフレットにもある、日銀法を改正する、って本気で言ってるんでしょうかね、というここからが本論。
中央銀行と政府がよく話し合う、というのはありでしょうが、日銀法を改正し、政府の言うとおりに日銀を動かすことになれば、間違いなく無秩序な国債増発→日銀引き受け→バランスシートの毀損による通貨の信認の喪失→ハイパーインフレ・・・となることは世界史が証明している。
だからこそ中央銀行の独立が守られており、ECBが完全に独立していないユーロ・・・監督権限もなければ自由な金融政策の執行すらままならない・・・はそれで苦労をしている。
なのに、わざわざ日銀を縛ろうと言うのは愚策中の愚策であります。
そもそも中央銀行の役割は、通貨の価値を守ることにあります。それ以上でもそれ以下でもないのです。デフレというのは通貨価値が上がることですから、元来ここは中央銀行の出番ではないのです。
これは過去にインフレで悲惨な思いをした人類の財産ともいうべき知恵で、これを犯すことは資本主義国としては有り得ない選択です。円安になって喜ぶ人もいるのかもしれませんが、これは安くなるという範疇ではなく、「破たんする」と言う意味です。自分からギリシャ化の道筋をつけてどうするんでしょう!!
「日銀の緩和不足で景気が良くならない」はウソ
そして、これらのアホどもを諭すように、日銀は彼らの中央銀行としての立場が許される範囲ですでに精一杯のことをやっていると、白川総裁は今週の名古屋での講演会で、いつものように上品かつ丁寧に説明されていました(日銀の説明はこちら)。
この図表12にあるように日銀はGDP比でみると、下手をするとFRB,ECBの倍に近い金額をすでにマネタリーベースで市場に供給しているのです。
これも日経を先頭に行われているマスメディアの罪で、日銀の緩和不足により景気が良くならない、というニュアンスのことを平気で書くわけですが、このデータをみて彼らは何と思うのか?
FRBとECBはリーマンショック後に集中的に供給してきたので、その期間に関してはかなりのマネタリーベースを供給したように見えますが、何せ日銀は2000年から超金融緩和政策を続けており、トータルで見ると供給している額は彼らよりはるかに多い。
つまり中央銀行の金融政策としては日銀が先頭を走っているわけで、これ以上緩和しても意味がないのは、この10年で証明済み。こういうデータを無視して言われるがままに鵜呑みにして、日銀が欧米の中央銀行に比べて緩和努力をしていない・・などと記事にしてしまう罪はかなり重い。
では現状何がいけないか?? と言えば話は簡単で、過度の規制による市場停滞(各種規制・バカ高い法人税・所得税を筆頭に外国人企業への各種参入障壁を含む)と、この景気後退期に増税などというばかげた話を持ち込む政府こそが諸悪の根源だ、ということになります。
だいたい、内需がGDPの約80%を占める国で内需拡大政策を取らずに一体何をして景気回復させるつもりなのか? 相も変らぬばらまき公共投資をやったところで乗数効果はすでに限られているし、結局内需の大部分を喚起する消費を拡大するしかないではないですか?
ですから方法論は明らかで、給料を無理やりあげるのか、減税をするか、しかない訳ですし、そのためには法人税も下げて活力のある外国企業を日本に呼びこむ・・というのもかなり効果がある。
思えば年収1億円なんて、外資系証券会社ではむしろ安い方でしたから、そういう企業がたくさんきて高給を払ってくれれば消費が拡大するのは間違いない。まあ、メルセデスじゃなく日本製の車を買ったら所得税5%減免なんてのもありかもしれないし、ついでに交際費の税率下げたら銀座が大復活して、とんでもないバブルがもう一回来るかもしれませんよ。
しかし、やってることと言ったら真逆であって、法人税が高く(シンガポールは最高18%)、帰ってくるあてもない社会保障費を入れると個人給与の50%が吹っ飛ぶ日本に来てもいい、なんてのんきな金持ちは世界中にいないのですよ。
どの政党が優勢なのかわかりませんが、少なくともこの程度の経済原理はわかったうえで政権を担当して頂きたい。
子供じゃないんだから、日銀をいじめていればいいなんて思ってたら、甘すぎますよ、安倍総裁!!
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