ニトリ、紀伊国屋書店・新宿南店跡地に熱視線 大家の高島屋と賃料を巡り、ギリギリの交渉

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ところが、今回の交渉で最大の難点となっているのは、都心の一等地ゆえに高いその賃料だ。現に紀伊国屋が撤退した最大の理由が、「家賃の交渉が成立しなかったから」(紀伊国屋)なのである。

高島屋もニトリを迎え、中間層の百貨店離れを防ごうと必死。新宿ではバスターミナル「バスタ」の新設も追い風だ

1996年当時、延べ床面積4000平方メートルで都内最大級の書店として、タイムズスクエアに入居した紀伊国屋。その頃、同社で絶対的な権力を持っていた、松原治社長(当時)の決断だった。

ただ当初の家賃は月額にして8000万円。一棟借りだったため、エレベーターや避難階段なども賃料対象となったばかりか、公共料金も重くのしかかり、年間10億円以上の支払いがあった。

黒字だったのはたった1期だけ

それでも出店当時は、本が最も売れた時代。単店売上高が80億円程度あったため、店舗部門は黒字だった。とはいえ、黒字だったのはたった1期だけで、以降は毎年巨額の赤字を計上。2009年には、賃料で年間1億円以上の値引きに成功したものの、それでも売上高が30億円にまで縮小した現在の厳しさは、言わずもがなだ。「経営上、致命的な出店だった。だが、契約書には『途中解約できない』とあり、20年間契約満了の2016年を待つしか無かった」(紀伊国屋元幹部)。

ニトリの入居が実現した場合、紀伊国屋が撤退した1階から5階のうち、全フロアに入るのか、それとも一部なのかは今のところ不明だ。また、ニトリ以外のからのオファーもある模様。今のところ、ニトリ側は「仮に、紀伊国屋と同じ家賃だとしたら、入らない」(関係者)と明かしており、入居条件の落としどころを探しているのかもしれない。 

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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