異例の「刑免除」判決で露呈した検察のずさん 「誤った起訴」に対し裁判所が踏み込んだ判断
罪はあるが、刑は免除するーー。接触事故で女性に怪我をさせたとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致傷)に問われていた70代女性に対して、横浜地裁が4月中旬、そんな珍しい判決を言い渡した。
報道によると、女性は交差点を車で左折しようとした際、自転車に乗った女性を転倒させ、首などに全治1週間のけがを負わせた。判決では、軽傷を認めた上で、傷害の軽さ、裁判への対応を長期間強いられたことから「刑の免除」を認めたという。
刑の免除は無罪とは異なるのか。今回はなぜ免除されたのか。この裁判の弁護人をつとめた増田智彦弁護士に話をきいた。
「異例中の異例判決」が出た背景
「刑の免除とは、無罪と異なり、有罪ではあるが刑を科さないということです。刑の免除事由はさまざまです。たとえば、犯罪を自分の意思で中止する『中止未遂』(刑法43条ただし書き)や、正当防衛をやり過ぎてしまった場合の『過剰防衛』(刑法36条2項)などが刑の免除の理由にあたります」
増田弁護士はこのように述べる。今回のケースはなぜ刑が免除されたのか。
「判決の中で裁判所が最も重視したのは、ずさんな捜査と安易な起訴です。裁判所は、判決の中で『検察官において、被害者にうつ病等の精神症状があることも踏まえて、関係証拠をより慎重に検討していれば、いったん不起訴処分となった本件が、そのまま起訴されなかった可能性も否定できない』と述べ、検察官のずさんな捜査と安易な起訴を強く非難しています」
刑が免除されることは珍しいことなのか。