マツダ「SKYACTIV」の次の技術は何が凄いか

コーナリングをより安全に速くする新技術

一方、Gベルタリングコントロールは、そのどちらとも違う。というのも、ブレーキではなく、エンジンからのトルクでボディを制御する。カーブに入る時、エンジン・トルクをわずかに減少させると、前のタイヤにぐっと重み(荷重)がかかる。

ハンドルを切るとき、前のタイヤに荷重がかかっているとグリップ力が引き出されて曲がりやすくなるのだ。逆にカーブを曲がりきって加速をしたい時、今度はエンジン・トルクを増してやれば、後ろのタイヤに力がかかって、走りが安定する。つまり、3次元で姿勢を制御している。

エンジンを使って曲げていく

なぜ、マツダは、姿勢を変えるきっかけに電子制御デフやブレーキではなく、エンジンを使ったのだろうか? スカイアクティブG/Dともに応答性が高いからだ。人間の感覚は、0.05Gというほんの少しの加速度の変化を感じられて、時間に置き換えると1000分の20秒以下というわずかな時間だ。

これに併せて1000分の5秒という短い時間ごとにクルマがどう動くかの計算を繰り返して、ハンドルの切れ角も1000分の1秒ごとに検知して、人間が無意識に行っているハンドルやアクセルの操作を計算で導き出して、エンジンのトルクの変化で姿勢を制御しているのだ。

スカイアクティブが生きる次世代技術

気が遠くなるほど細かく計算と検知を繰り返し、計算した通りの動きになるようにエンジンからのトルクを細やかに制御することを繰り返して、乗員が気づかないうちに快適でスムーズな運転にしている。これはどのエンジンでもできるわけではなく、制御系を一つにまとめ細かな制御にも迅速に対応できるスカイアクティブが生きる技術というわけだ。

論のところはちょっと難しいが、結果として、ドライバーは自分の運転がうまくなった気がして、無意識で行っている微修正を自分でしなくてよくなるので、長距離の運転のときなど疲れにくく感じるだろう。助手席や後席の人は左右に振られることが減って、スムーズな運転をしてくれるドライバーへの信頼が増して安心して座っていられる。

マツダでは、Gベクタリングコントロールは早々に市販車に投入するとしているのだが、セミ自動運転や自動運転が導入される時代になると、こうした人間の思い通りにクルマを動かせる制御が重要になってくる。これは、自動運転のクルマを安全に走らせるという基本的な部分の上に加わる付加価値になり、自動車メーカーごとの個性が問われる部分となるはずだ。

「自動運転はメガサプライヤーやITベンチャーでもできるでしょう。ただ、人間が運転したいという気持ちに沿って、クルマを動かすことは自動車メーカーにしかできないと考えています。それができないと、いくら安全にクルマを走らせても、運転したいと思ってもらえなくなってしまうでしょう」と、マツダの藤原清志専務執行役員は言う。

従来のシャシー制御技術では、山道をビュンビュン走らせて楽しいという制御はできても、安心して乗っていられるという部分を向上することは難しかった。今回マツダが発表したGベクタリングコントロールでは、ドライバーの意志に沿う運転をサポートする仕組みなので両立させることもできる。

この機能、地味にじわじわと効いてくるだけに、マツダのクルマに一度乗ったらまたマツダに乗りたくなるという、いい意味での「マツダ地獄」を味わうことになるかもしれない。

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