住友商事がJ:COM非上場化のナゼ 狙いは配当の山分け

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有利子負債比率は12年9月期の22.5%から40.5%に、株主資本比率は同54.9%から40.2%にそれぞれ悪化する。さらにJ:COMは、KDDIの同業子会社JCNを借入金1050億円でKDDIから買収する予定で、これが実現すると有利子負債比率、株主資本比率はそれぞれ47%、33%となる。有利子負債比率は12年9月期の2倍以上、株主資本比率は4割減である。

J:COMのフリーキャッシュフローは年間約700億円であり、JCNのそれを加えれば、増加した有利子負債は3年くらいで返済可能だが、上場していても成長加速、経営安定は実現できそうだ。ここまでする以上、非上場化のメリットがハッキリしないと住友商事の株主は納得できないだろう。

株主には余計なお世話

住友商事とKDDIの共同でのTOB(株式公開買い付け)による、ジュピターテレコム(J:COM)非上場化のメリットはどこにあるのか。あらためて住友商事の大澤善雄専務に尋ねたところ、次のような説明があった。

まずは、思い切った投資に伴う一時的な収益の悪化による株価の下落回避。たとえば、旧式のセットアップボックスを一斉に取り替えると一時的に費用が増加する。収益悪化で既存株主に迷惑をかけることを防ぐ、という理由だ。しかし、少数株主はその後の成長の果実から疎外されることになる。すべての非上場化案件に当てはまる話で、将来の成長を楽しみにしていた株主にとっては余計なお世話といえる。

次が株主間協定書の存在。KDDIと次のステージに進むに当たり、両社は事細かい定めを記した株主間協定書を取り交わすことになったが、これは少数株主の経営関与を著しく狭める恐れがある。「コンプライアンス上、グレーなものは残したくなかった」(大澤専務)。リスク最小化ということだが、クロではない以上、これも決定的ではない。

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