隠し扉奥に秘密が!中国偽物市場に潜入する 撲滅されたはずの市場が存在していた
かつて、上海には大規模なニセモノ市場があった。中国が「ニセモノ天国」と世界中から揶揄されていた2000年代前半のことだ。日本でも、中国の知的財産問題が話題になっていた頃である。私は当時、ある雑誌の取材で現場ルポをしたのだが、先日、そのことを思い出し、上海在住の友人に話してみたところ「今でもニセモノ市場はありますよ。せっかくですから、この機会に行ってみたらどうですか?」と声を掛けられた。
「上海はこれだけ変わりつつあるのに、いまだにそんなものが存在するのか……?」。ニセモノと本物が常に混在するのが中国ではあるが、GDP世界第2位となり、あらゆる商品の品質が向上してきていることを私も実感していただけあって、もうそろそろそんなものは撲滅される方向に向かっているのでは、と思っていた矢先だっただけに、少々驚いた。
と同時に、こうした需要は簡単にはなくならないもので、ひとつのビジネスとして成り立っているのだな、と思った。現場がどうなっているのか。10年前の取材時とはどう異なっているのか。早速出かけてみることにした。
「噂の現場」に行ってみた
平日の午前10時半。上海市を縦横無尽に走る地下鉄のひとつ、2号線「上海科技館」駅を降りると、すぐに目的の看板が目に飛び込んできた。『亜太盛匯 A.P.PLAZA』と書かれたゲートこそ、まさにニセモノ市場への入り口だ。改札から徒歩10秒で、そのゲートに辿りついた。
まだ午前中だからだろうか。閑散としていて、売り子らしき人や警備員がちらちらとこちらを見ている。とりあえず、普通の買い物客のフリをしてニセモノ市場へと突入することにした。
地図で見ると「亜太盛匯」は広大なショッピングセンター「上海亜太新陽服飾礼品市場」の一角だということがわかる。駅をはさんで北側と南側に無数の小さな店が並んでおり、その中に「亜太盛匯」がある。だが、一見したところ、ブランド品らしきものは見当たらない。ざっと見渡したところ、販売しているのは衣服、スカーフ、アクセサリー、靴、カバン、スーツケース、ぬいぐるみ、スマホカバー、おもちゃなど、ごく普通の商品が多い。ここはニセモノ市場ではないのだろうか?
ぶらぶらと歩いてみることにした。店と店の間には休憩用の長椅子があり、買い物袋を提げた欧米人観光客らしき人々が数人腰を下ろしていた。パンダの置物やチャイナドレス風の衣服など、欧米人が喜びそうなおみやげ物も置いてあるので、そうしたものを買っていたらしい。中国人や日本人らしき人の姿は見当たらない。
思い切って、店内に入ってみることにした。すぐに店員が声を掛けてきた。「ニホンジン?ニホンジン?」。
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