隠し扉奥に秘密が!中国偽物市場に潜入する 撲滅されたはずの市場が存在していた
片言の日本語で話しかけられてびっくりした。思わず私がうなづいてしまうと、若い女性の店員はにんまりして私の腕をぐいっと引っ張ると顔を近づけてきて、「ブランド、あるよ。見る?」とささやいた。
棚の奥に隠し扉が!
その店を出て、10軒くらい先へと案内された。他の店と何ら変わらない小さな店だが、なんと、その女性店員は、雑貨が置かれた棚をぐーっと押したのだ。その棚は隠し扉になっていたのである。反転する隠し扉の向こうが見えてきた。かなりの広さの部屋がもうひとつあり、そこに「ルイ・ヴィトン」のバッグや「ロレックス」の時計が所狭しと置かれていたのである。
「なるほど。こうなっていたのか!」
11年前の2005年、私は同じ上海市の淮海路という地区にあるニセモノ市場を訪問し、ルポを書いたのだが、そのときは、最初から大っぴらにニセモノが店頭に出してあった。棚には高級ブランドの財布や小物があったが、上からC級、B級、A級となっていて、A級が最も品質がよく、いちばん下の引き出しの中には特A級の商品が収められていた。警察が回ってきたときだけ、店員はすべてのブランドを引き出しにしまっていたが警察も「暗黙の了解」だったように見えた。
当時、いちばんいいものは倉庫に隠してあるという噂があり、私とカメラマンは恐る恐る店員のあとについて古い2F建ての木造建家屋に入った。部屋のカギを開けて入り、2Fに上ると、そこには6畳ほどの部屋が3つあり、「隠しブランドショップ」となっていたのだ。
当時はニセモノ市場が堂々と路面店(テントがはってあり、青空市場のようになっていた)で展開されており、警察が回ってくると隠す、そして、警察が去ると店に出す、の繰り返しで、もっと高級品を買いそうな客は別の建物まで案内する、というスタイルが一般的だったが、2000年代の後半、ニセモノに対して当局の取り締まりが厳しくなり、そうした形態は一掃された。
ところが、今回私が見たのは、まったく違う場所で、違うスタイルで存続するニセモノ市場だった。表にニセモノ商品は一切出さず、隠し扉の向こう側に別の部屋を作るという巧妙なやり口だったのである。
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