隈研吾がレストラン電車をデザインした理由 新国立競技場の設計者がこだわる"木の質感"
――客席のある2号車・4号車の天井は、2号車が柿渋の和紙を使ったデザイン、4号車ではとなっていますね。
柿渋の和紙というのは、和紙を長持ちさせるために伝統工芸で使われてきた材料なんですけれど、伝統工芸が車両デザインに入ること自身、ちょっと新鮮な感じがするんです。車両という鉄の塊の中に、そういうものを入れ込めるという。例えばヨーロッパやアメリカの人に、紙が電車の中に使われているといったらびっくりすると思いますね。
――ヨーロッパの食堂車のお話が出ましたが、日本とヨーロッパの鉄道デザインを比べてどのように思われますか。
日本は、速さという意味で新幹線が世界の鉄道の歴史を塗り替えたので、逆にゆったりとした移動の時間を楽しむというところが忘れられてしまった気がするんですね。ヨーロッパは逆に、高速列車はとりあえず速く走ってくれればいい、でもゆっくりした時間もあるというふうな、鉄道文化みたいなものが残っている感じがします。
日本はもともとすごく豊かな鉄道文化があったんだけど、それが新幹線以降、ちょっと寂しくなっちゃったので、それをもう一度取り戻したいというのがありますね。
ディープな自然にふさわしい内装
――車内デザインのコンセプトは「渓谷などの自然をモチーフとしたデザイン」とのことです。外観デザインは秩父の四季などを表現しているとのことですが、内装も同様でしょうか。
秩父って、緑もあるし、川もあるし、東京の近くにこんなに自然があるという不思議な場所なんですよ。郊外のような風景が広がっているかと思うと、秩父には全然違うディープな風景があるから。そういうディープさみたいなものに応えられるような内装になっていると思いますね。だから、内装もけっこうディープです(笑)。色合いなんかも、けっこうディープな、わりと僕らが普通は使わないような濃い目の色を使っています。
建築物というのは、どちらかというと明るい色を使ってニュートラルに攻めていくというのが普通のデザインなんですよね。でも今回は、わりと濃い目の色を使っていて、普通の建築のインテリアではやったことのない色使いをしてみたんです。秩父の自然がディープだから、それに応えるようなものを作りたいなと思って。
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