あなたは大丈夫? 知らないと大変 2008年の新制度(上)
【内部統制】 4月1日スタート導入直前でも混乱続く
内部統制報告制度が4月1日から始まった。その20日前、3月11日になって、突然、規制当局の金融庁が同制度に関する「11の誤解」と題したQ&A集を公表した(下図)。「実務の現場で過度に保守的な対応が行われている」(金融庁の総務企画局企業開示課)ためだが、導入直前になぜ混乱しているのか。
内部統制報告制度の別名は日本版SOX法。エンロン事件やワールドコム事件などをきっかけに米国で作られたのがSOX法。これがベースとなっている。要は、上場企業の経営者は、粉飾決算をしない(=行われない)よう、社内のチェック体制をしっかり作ること、そしてそれを監査人に証明してもらうこと、というルールのことである。
決算に関連したものなので、影響があるのは経理部などだけ、と思いがちだが、それは間違い。社内のチェック体制は、決算書だけ見て判断されるのではない。業務が効率的に行われているか、法令が順守されているか、資産が正しく保全されているかという3点も含まれる。監査の対象は、営業や生産も含め、ありとあらゆる部門がなりうる。しかも場合によっては、短期、臨時雇用の従業員も含まれる。
つまり、たとえば、受注センターのアルバイトの人が受けた注文が架空でないかをどのようにチェックしているか、その仕組みはきちんとできているかなども見られることがある。仕組み作りという点では、一連の業務の流れが文書化されているかも監査されることがある。
このため、企業は必死になってさまざまな業務の文書化を進めている。しかし、下図の誤解4、5にあるように、すべての業務に内部統制が必要なわけではなく、文書化も義務ではない。監査法人とすれば、できるだけ多くの業務が文書化されていたほうが、いざというとき自らの責任を回避しやすいので要求するのだろうが、あくまでも経営者がリスクを勘案して決めてよいのだ。
社内の正しいチェック体制が整っているかどうかも、3月決算会社の場合、来2009年3月末時点で整っていればよい。裏を返せば、4月1日からの1年間、問題点の是正に追われる企業もあるかもしれない。