始まった優先株転換 三菱自動車再建の行方
第一の理由は「強制転換条項」にある。A種優先株は14年6月までの転換請求期間であれば、保有側は毎月10日に普通株へ転換できる「強制転換条項」が付与されている。
この期間を過ぎると、転換時期を決める権利は三菱自側に移ってしまう。さすがに、転換請求期間内に自粛を解かないと保有者に申し訳が立たない。
第二の理由は、下限転換価額の存在だ。前述のように三菱自の優先株の転換価額は変動するが、第2回は54円、第3回は44円という下限が定められている。1年前に約100円だった株価はジリジリと下がり、7月以降は70円台前後で推移する。この先下限転換価額を下回れば、保有側が普通株に転換し売却しても優先株引受時の資金が回収できなくなる。優先株の存在が潜在的な希薄化圧力となっている以上、株価は下がりやすい。下限まで余裕があるうちに自粛を解く必要がある。
三つ目として、三菱自の業績が多少なりとも上向きつつあることが考えられる。株式の需給悪化を除けば、優先株の普通株への転換は、必ずしもマイナス要因ではない。ただ、転換が三菱グループによる支援の後退と受け止められるのは避けたい。東南アジア市場での販売好調などを受け、7月には今期の営業利益予想を上方修正した(ただし、欧州生産子会社株の売却特損で最終益は下方修正)。いつまでも転換自粛を続けるわけにはいかない以上、撤回するなら今と考えてもおかしくない。
はっきりしているのは、第3回と第2回の転換で、普通株は1億2000万株強増加したということ。結果、ただでさえ多い普通株式は56億5841万株まで膨らんだ。
重工は15%を維持
これで動かざるをえなくなったのが三菱重工だ。
三菱自の“生みの親”である三菱重工は、05年12月に普通株の15%以上を取得し、三菱自を持ち分法適用会社としている。