経済制裁下でも日本製品は浸透?

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北朝鮮南部・開城から平壌に戻る途中、休憩所に立ち寄ったところ、日本でも有名な飲料メーカーのジュースが販売されていた。1ドルで買おうとしたら、裏側のラベル付近に目が行った。「ライセンス・日本、製造・シンガポール、流通・香港、輸入元・北朝鮮」と書いてある。厳密にいえば日本製ではないが、日本ブランドが北朝鮮に流入している一つの例だった。

2006年に北朝鮮は、国連安全保障理事会決議により経済制裁を受けている。また、日本政府も同様の経済制裁を続けており、この数年、両国間の貿易はほぼゼロ状態が続いている。だが、「政策があれば対策があり」。さまざまな抜け道があり、このジュースのように、平壌市内では日本製品も少なくはなかった。

「このままでは、日本企業が進出しようとしてもすきはない」と北朝鮮政府関係者は言う。日本製が来なくても、中国製や欧州製の品物が平壌には所狭しと並べてある。これが現実だ。

経済制裁自体を否定するものではないが、その有効性についてあらためて検討したほうがよいのではないか。記者は『朝鮮語大辞典』『朝鮮中央年鑑』といった、北朝鮮を知る基本的文献十数冊を持ち帰ったが、空港の税関ですべて没収された(正確には「任意放棄」)。税関は「経済産業省の輸出入禁止措置のため」と説明するが、敵対していても相手を知ってこそ対話も生まれる。そのために必要な文献でさえ輸入を禁じるのは行き過ぎではないか。「敵性言語」として英語を忌避した戦時中とまったく変わらない。

(週刊東洋経済2012年10月6日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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