九州「ハンズマン」の店作りが超型破りな理由 22万点の商品を「一目瞭然」に陳列する極意
〈以下、大薗誠司社長〉
新店舗をオープンする際に、建物の大きさを初めに考えるのではなく、まず売り場をどう作るかを考える点に象徴されるように、ハンズマンは逆転の発想を大切にしています。なんでも逆から考えるのが楽しい。その発想の原点は家族との会話にあります。
幼少のころに、好き嫌いがあって出されたものを食べなかったことがありました。すると父から「明日から食事は毎回、ごはんとみそ汁と梅干し1個」と決められたんです。その食事が2週間続いたある日、父が「おにぎりを作りなさい」と言うんです。
上は小学生、下は幼稚園生の兄弟3人でおにぎりを作って父親に渡すと、一口食べて「まずい、こんなのは食えん」と言うんですよ。涙が流れました。おいしく食べてもらえないというのはこんなに悲しいことなのかと。このとき、相手の立場、逆の立場に立つことが大事だとわかりました。
新店舗をオープンするときは、2カ月半をかけて従業員と一緒に店内の看板や柱の装飾などを手作りします。楽しいからというのもありますが、やはり工具など、店の商品を実際に使ってみないとお客様の気持ちはわかりませんから。
「DIYが初めて」というスタッフも、2カ月半後には工具を使いこなせるようになるんですよ。そして、オープンしたときに店内を見たお客様の歓声を聞いて、喜びやDIYの楽しさを感じます。それが「お客様にどう喜んでもらうか」という接客につながるんですね。
スタッフに「させよう」としていた8年間で学んだこと
慶應義塾大学理工学部卒業後は現在の三菱東京UFJ銀行に就職しました。父が始めたハンズマンを一般的な経済知識が全くないまま継ぐと、偏った店舗運営になってしまうと思ったからです。そして数年働き、異動の時期とハンズマンの上場準備が重なった1995年に帰郷して、ハンズマンに入社しました。
人生経験も社会経験も少ない26歳で店長に就任しましたが、職場のスタッフは年上の、小売業のベテランばかり。そんな環境で、どうすればスタッフがお客様と向き合い仕事をしてくれるのか、一生懸命考えました。当時の私は、彼らをお客様に「向き合わせよう」として「喜ばせないといけない!」と常に怒っていました。
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