原子力規制委員会が発足、どうなる原発再稼働

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安全基準自体がより厳格になることは間違いない。田中委員長は会見でも再三、各原発サイトや周辺自治体の防災への対応の不十分さを指摘した。現状の暫定基準では、免震重要棟の設置を要件としているが、実際のところ将来的な設置見込みでOKとしている。仮に、免震重要棟の設置が、文字どおりの“設置”ならば、クリアのハードルは一段と高まる。

こうした中、電力会社は引き続き厳しい状況に置かれることになる。

特に気が気でないのは北海道電力だ。同社の場合、電力需要のピークは冬場に訪れるが、このまま原発が再稼働できないと自社の供給力では需要を賄えない可能性が出てくる。夏と異なり、冬場は一日の電力ピーク時間が長いうえ、過度な節電は要求しにくいと、泊1、2号機の再稼働を急いでいる。しかし、規制委は「電力需給は判断の対象にはならない」としており、今冬の再稼働の望みは薄い。

原発なしでも電力供給は何とかなっているほかの電力会社も、火力発電の稼働増による燃料費の膨張が経営の負担になっている。

たとえば、九州電力が9月7日に公表した2012年4~9月期の業績予想では、営業損失が1555億円と前期(72億円の営業損失)から急拡大するとの見通しだ。同社は通期見通しを示していないが、原発再稼働がなければ、営業損失は3000億円規模まで膨らむ。

現状、各社とも電力料金の値上げに慎重な姿勢を示している。が、再稼働の見通しが年明け以降もつかなければ、財務悪化に歯止めをかけるためにも値上げに踏み切るケースが出てくるだろう。

政治や電力業界の利害から独立し原発の安全性を担保する──与えられた役割を規制委は全うできるか。

(撮影:今井康一 =週刊東洋経済2012年9月29日特大号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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