「羽田アクセス線」「蒲蒲線」は、実現するのか 東京圏の「24路線整備」答申案を7日に公表

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東京圏の鉄道整備で、国交省交通政策審議会の小委員会が答申案を発表。JR・東急蒲田駅と京急蒲田駅の間をつなぐ「蒲蒲線」も盛り込まれた(写真:うげい / PIXTA)

今回の答申案で目立つ空港アクセス関連の新路線は、「都心直結線」「羽田空港アクセス線」「新空港線(蒲蒲線)」の3路線だ。

都心直結線は押上から東京駅付近の「新東京」を経由して泉岳寺までを結ぶ、現在の都営浅草線のバイパスといえる路線で、京成線・京急線と乗り入れて成田空港と羽田空港間、さらに都心部から両空港へのアクセスを改善するほか、リニア中央新幹線の始発駅となる品川駅とのアクセス利便性向上も意義として掲げた。

「羽田空港アクセス線」は、浜松町~東京貨物ターミナル間の既存の貨物線を改良して東海道本線やりんかい線、京葉線と直通させ、都心や新宿・渋谷方面、臨海部と羽田空港を結ぶ計画で、JRの既存ネットワークとの直通により多方面と羽田空港とのアクセスが向上することや、既存の路線を活用することで全線新線を整備する事業より早期整備が可能な点もポイントとなっている。

「新空港線」は、東急多摩川線の矢口渡駅から蒲田駅、京急蒲田駅を経て京急空港線の大鳥居駅までの路線を整備する内容で、約800m離れたJR・東急の蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶことから「蒲蒲線」とも呼ばれる路線。東急と京急で線路の幅が異なる課題があるものの、矢口渡~京急蒲田間を先行して整備することにより、離れた2つの蒲田駅間を結ぶことで「早期の事業効果の発現が可能」である点を整備の意義としている。

これらの空港アクセス路線を盛り込んだことについて、小委員会の委員長を務める家田仁・政策研究大学院大学教授は「オリンピックは間に合わないが、訪日外国人の増加や国際競争力の強化には、空港アクセスの利便性向上は『一丁目一番地』」と話した。

前回あった「ランク付け」はなし

2000年の「第18号答申」では、各路線について目標年次の2015年までに「開業することが適当」「整備着手することが適当」「整備方策等について検討すべき路線」に分類し、A1、A2、Bと3段階でランク付けしていたが、今回の答申案ではなくなった。2000年の答申で「開業することが適当」のA1にランク付けされた路線は東京メトロ副都心線やつくばエクスプレスなどの16路線で、全路線が開業、または事業着手している。

ランク付けをなくした理由について国交省は、鉄道事業の需給調整規定が廃止され、国がプロジェクトの進行管理をする法的根拠がなくなったこと、交通政策基本法の制定で、交通に関する施策は国や交通事業者、住民などが連携して行う「ヨコの関係」となったためとしている。家田委員長は「形式的なランク分けよりも、我々はこのプロジェクトに何を期待しているか、何が課題かを明確にする形を取った」と語った。

今回の答申案は、4月8日から14日にかけてパブリックコメントを募集し、月内の最終とりまとめを目指す。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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