シャープ「存続」の切り札・“世界の亀山”が危ない アイパッドの不手際 大きく尾を引く
ところが、シャープは出だしでつまずいた。発売まで3カ月に迫った今年1月、アップルからいち早く「認定」を受けたのはサムスンだった。サプライヤーはアップルから品質のお墨付きである認定を受けるまでは納入できない。
シャープが認定されたのはサムスンから遅れること数週間後。この間、サムスンは初期ロット向けの大量受注で莫大な利益を手にした。LGは認定こそシャープと同時期だったが、その後は、順調にスタートを切った。
一方、新アイパッドが発売されて以降も、シャープの生産量はなかなか上がってこない。「予定数量は何とかこなせても、歩留まりが悪く“量産”には程遠い状態だった」(関係者)。
LGが月250万~300万枚、サムスンが200万~250万枚を納入したときも、シャープは月100万枚程度にとどまった。しかも、低い歩留りのせいでコストが想定以上に膨張。12年4~6月期の営業赤字と、13年3月期業績の大幅下方修正を招いた。
アイパッドの不手際 大きく尾を引く
亀山第2はもともと、自社ブランド「アクオス」大型テレビのために設計された工場だ。00年代半ばは30インチ前後のパネルを量産し、“世界の亀山”の名をほしいままにした。
ただ、液晶テレビの単価下落や円高で、競争力が急速に低下。スマートフォンやタブレット端末など中小型液晶用のラインにすることで再生を誓った。新アイパッドは大切な試金石だったが、「大型のガラス基板を細かく切断する過程で問題が発生した。パネルの薄型化など新たな工程が増えたことで、歩留りも悪化した」(アナリスト)。パネルが新技術のIGZOだったことも、もたつきを助長したとみられる。