園芸・ペット・LED照明 今、復興フロントランナー--大山健太郎 アイリスオーヤマ社長《上》

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 それまで下を向いていた社員の顔が上を向いた。ワーッと喚声が上がった。それからが大車輪である。

国内最大級、2.6万パレットの処理能力を持つ角田工場の自動倉庫。棚が崩れ、商品が飛散した。自動倉庫が動かなければ、出荷できない。激しい余震の中、高さ30メートルの場所での復旧作業は「決死隊」である。「普通なら、やめてくれ、と言う。申し訳ない。が、おかげで他社は復旧に3週間かかったが、当社は電気が通じて5日目で出荷できた」。

アイリスオーヤマ傘下のHC(ホームセンター)、ダイシン。宮城県を中心に店舗展開するダイシンの店先には、震災翌日から数百人が列を成した。大山はアイリスオーヤマから社員200人を派遣、什器を覆う泥水をかき出しいち早く再開した。

震災後は電気・ガスが止まり、ガソリンも払底していた。大山が出した指示は「簡易コンロとボンベ、電池と自転車。四つを切らすな」。

「メーカーベンダー」を標榜するアイリスオーヤマはメーカーでありながら、ベンダー(問屋)としての物流・配送機能を持っている。通常は納入先のHCに自社製品を運ぶ物流網を“逆方向に”使い、必須4品を吸い上げた。「在庫がいちばんたくさんあるのはHCの店頭なんです。九州や関西のHCからかき集めた。損得関係なし。よかった。お客さんが必要なものを切らさなかった」。

火事場のばか力が出たと思う。だが、家に帰ると落ち込んだ。グループの社員が3人亡くなった。市から要請のあったブルーシートの数の多さに胸が詰まった。棺代わりのブルーシートである。普段はめったに聞かないバッハのミサ曲に救われた。 

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