民主党は豹変に躊躇するなかれ、問題が多いいくつかの政策公約

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無料化でCO2が増加

次に地球環境だ。ある試算によると、無料化によってCO2排出量は運輸部門だけで4%増加するという。1兆3000億円かけてCO2の排出を増やそうとしているわけで、民主党自身の環境政策にも矛盾すると言わなくてはならない。

さらに無料化が、鉄道、バスなどの公共交通機関に与える打撃も大きい。公共交通機関、とりわけ鉄道は単位輸送量当たりのCO2排出量が自家用車に比べてケタ違いに小さいだけでなく、今後、高齢化が進むに伴って増加する交通弱者にとって、ますます重要性が高まっていく。

政府は、鉄道や路面電車などの新たな公共交通網の整備によって、自家用車から公共交通機関への移行を促していくべきなのに、高速道路の無料化はそれに完全に逆行する。

もう一つ、CO2削減の観点から問題なのが、ガソリン税、軽油引取税、自動車重量税、自動車取得税の暫定税率の廃止だ。暫定税率の廃止による減税もまた自動車の使用を促し、CO2の排出を増大させる。今や自動車の使用は少しでも抑制させるのが大きな目標なのに、ここでも逆にそれを促してしまう。

自動車関係諸税の暫定税率は、むしろ名称を変更して恒久化し、一般財源として公共交通機関への助成やCO2削減のために使うべきだ。

さらに、自動車への課税に関しては根本的に踏まえておくべき問題がある。それは、自動車が社会にもたらしている環境悪化、交通事故、公共交通への打撃などのコスト(自動車の社会的費用)を自動車使用者が負担していないという問題だ。この観点からいって、自動車へのいかなる税負担も軽減すべきではない。

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