何十年もの間、この経済モデルが大きな成功をもたらしていた。中国、日本、韓国、その他の東南アジア諸国は、このモデルによって大きく成長できた。世界貿易が低迷している現在でも、地域貿易がそうした諸国の成長戦略で重要な要素であることに変わりはない。
しかし、南アジアでは、自由貿易の拡大によって得られるチャンスが経済成長に繋がるまでにかなり時間がかかり、残念な結果となっている。世界で最も貧しい人の44%が、この地域で暮らしているのだ。
われわれには、貿易で国民を貧困から救うため努力する義務がある。しかし、自由貿易が急速に国際問題となっているため、世界市場に入り込むことで成長を促す選択肢が急速に奪われているように思われる。スリランカなど各国の重要な成長促進剤が貿易であるならば、われわれは南アジアを世界で最も経済的に隔離された地域から経済統合された地域へと変えて、自らの手で自由貿易を拡大させねばならないだろう。
現在、東南アジア諸国連合(ASEAN)の域内貿易が全体の25%を占めるのに対し、南アジアの域内貿易の比率はたった5%だ。世界銀行は昨年、関税やその他の規制が世界貿易機関(WTO)が推奨している水準まで下がれば、インド・パキスタン間の年間貿易額は、現在の10億ドルから100億ドルまで急増すると予測した。
SAARCの変革が急務
関税などの不要な規制のせいで、南アジア諸国の貿易成長は制限されている。世界中のあらゆる地域貿易ブロックの中で最大である20億人近くの人口をカバーする南アジア地域協力連合(SAARC)が機能すれば、こうした障壁は一掃されよう。
しかし、SAARCは二国間協議を軸としているため交渉ペースが遅く、この地域を必要以上に貧困へと押しやっている。SAARCの成功には、多国間協議による新たな協力体制が不可欠だ。
気候変動による大被害が発生すれば、状況は悪化する一方であろう。南アジアの大部分はまだ農業国で、領土の大部分が低地の海岸地帯に位置しているため、海水レベルの上昇や異常気象に非常に弱い。ヒマラヤ山脈の氷河が後退すれば、パキスタン、ネパール、インド北部に住む6億人の生命や生活が破滅するであろう。
効果的な対策を施すにあたっての政治的なハードルは高い。しかし、この地域が抱える問題は大きいため、SAARCの全加盟国は協力を強める方向で動かずにはいられなくなるはずだ。協力することで、東部の近隣諸国と同じような、ダイナミックな経済基盤を構築できるはずだ。
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