本土決戦幻想 オリンピック作戦編 保阪正康著

本土決戦幻想 オリンピック作戦編 保阪正康著

歴史に「イフ」はないという。しかし本書で述べられるイフは重要である。もし天皇聖断が下されず玉音放送がなされなかったら……。米軍は鹿児島の三つの海岸から上陸し、足場を築き次第、関東上陸へ進んだことは確実だった。しかも第3、第4の原爆が投下されたはずだ。多くの国民が命を失い、ソ連の進撃により北日本の北朝鮮化も避けられなかったとすると、歴史にイフはないで済ますわけにはいかないだろう。

米軍は南九州制圧をオリンピック作戦と呼んだ。日本軍は乏しい戦力のため真正面からは戦えず、特攻機、人間魚雷、竹槍作戦などに頼るほかなかった。昭和史を徹底的に追究している著者は、オリンピック作戦の内容と、志布志湾や吹上浜、特攻基地跡、松代の幻の大本営を丹念に取材して回ることで、軍人たちが奉じた本土決戦の狂気と虚妄、結果としての大惨事を検証、予測している。戦争の史実を正確に知ることの意味深さを痛感させられる。(純)

毎日新聞社 1575円

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