チッソ分社化の茨道、補償の原資となる事業会社の収益力は低下

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 こうした状況を問題視した与党水俣病問題プロジェクトチームは、事態の打開に向けて動き出す。未認定患者に一時金を支払うことを優先し、チッソの分社化案を検討した。折しも01年以降は薄型テレビ需要が本格的に増加。液晶材料を主力とするチッソは業績が上向き、07年度に過去最高の経常利益を計上するまでになった。

収益力が高いうちに事業売却すれば、補償金などの「原資」も潤沢になる。与党は株式売却額を2300億円と見積もり「これで患者補償と債務返済が完遂できる」(自民党水俣病問題小委員会座長の園田博之衆議院議員)と踏んだ。具体的には、認定患者の将来補償に500億円を積み立て、未認定患者への一時金に400億円前後を準備するなどだ。

今後、審査会で詰める一時金の対象者は「未認定患者3万人のうち、6~7割程度が対象になるのでは」(環境省)とされており、支払金額も1人当たり150万~300万円の範囲になりそうだ。支払いの残りは、国や県、金融機関から借り入れた水俣病関連の負債1754億円(09年3月末)の返済に回す。

ただ、2300億円は昨年6月の経済状況を反映したもの。液晶材料は単価下落に見舞われ、チッソの収益力は大きく低下した。当初の試算に狂いが生じたことは否めない。

事業提携に設備投資 普通の会社になりたい

分社化後の特定事業会社は「すべての補償が終了すれば速やかに清算する」(チッソ)。

未認定患者からは今回の救済法について「被害者の高齢化が進む中、一時金を受けられる人が出てよかった」(水俣病出水の会)と歓迎する声も聞かれる。一方で、あくまで訴訟の道を選ぶ被害者も少なくない。一時金支払いを申請する際、会社への賠償請求訴訟を行っている場合はそれを取り下げなければならない。「全員救済を求め続ける。最終判断は司法に委ねたい」(水俣病不知火患者会の大石利生会長)。

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