チッソ分社化の茨道、補償の原資となる事業会社の収益力は低下


 1995年にも政治決着が試みられ、未認定患者1万1000人に対し、1人当たり260万円の一時金が支払われた。最終解決への道筋をつけたかに見えたが、04年の関西訴訟最高裁判決を受けて、再び賠償請求訴訟が急増した経緯がある。

今後、司法が行政よりも幅広い症状を水俣病と認めれば、認定申請者がさらに増加して費用負担が膨らむおそれもある。だがそのとき、原因企業チッソは分社化され、水俣病の責任追及は難しい。

「普通の会社に戻りたい」。チッソの岡田俊一社長は、度々そう口にしてきたという。いくつもの賠償請求訴訟がリスクとみられ、他社との事業連携が思うように進まなかった。事業投資を行うにも、債務超過では民間銀行からの大規模な資金調達は難しい。熊本県所管の財団法人から100億円を借り入れて設備投資に充てたこともある。すべては水俣病の責任を負うがゆえだ。

未認定患者に一時金を支払うことで手に入れた「分社化」という道筋。だが、特措法には「事業会社の株式譲渡は、救済の終了及び市況の好転まで暫時凍結する」と記されている。必ずしも、チッソの描くシナリオどおりに事が運ぶわけではない。液晶材料に偏った収益構造に陰りが生じる中、目下、太陽電池材料や有機EL材料など新規事業の育成を進めている。

水俣病の発生から半世紀余り。被害者は現在も数万人に上るといわれる。分社化を経て、チッソは「普通の会社」に戻れるのか。

(二階堂遼馬 =週刊東洋経済)

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