ドル反発なければ株価は「1万4000円割れ」も 消去法で円が買われるのは「必然」である
また、国民に人気が高いといわれるロンドン市長のボリス・ジョンソン氏が21日に離脱を支持すると表明したことが市場を震撼させている。これにより、22日の為替市場では通貨ポンドが7年ぶりの安値をつけ、英国債も売られている。英国はEU域内で第2位の経済規模がある。自動車生産の4割をEUに輸出するなど、EUとの経済的な結びつきは極めて強い。そのため、英国の離脱は英国のみならず、EUにとっても打撃となるだろう。
それを見越してか、ポンドのみならず、ユーロにも売りが出始めている。ドイツ自身も経済問題に加え、金融機関の信用問題や移民問題を抱えている。国のコスト負担が増える可能性もあり、市場の不安材料になりつつある。このような状況もあり、「ポンドはEU離脱問題で売り、ユーロも買えない、ドルは政治的にも上昇しない」となれば、消去法的に円が買われるのは必然ともいえる。
政策対応の発動とその影響
マーケットの鉄則として、「政治的な動きには逆らわない」というものがある。現在の為替市場で起きている動きは、きわめて政治色が強い。繰り返すように、日本サイドに円相場の水準の決定権はない。G20を前に、米国から露骨な円安誘導についてはすでにくぎを刺されている。金融政策を利用した力技による株高・円安の演出はきわめて難しい状況にある。
しかし、手をこまねいていると、3月末の企業決算末を前に急激な円高となり、企業業績の悪化に加え、保有株が極めて低い水準で評価されることになりかねない。さらに、安倍首相の肝いりで運用方針を大きく見直した、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の巨額の運用損が拡大する恐れがある。今のままでは、10兆単位での運用損の公表は不可避である。
こうなれば、政策発動により株価を支え、円安にもっていくしかない。このような事情を見越してか、市場では「衆院ダブル選挙プラス消費税率の引き上げの先送り」観測が台頭している。さらに補正予算の投入や実弾による株価下支えなどもうわさされているようだ。
しかし、現在の水準から株価を押し上げるには、相当の政策を打ち出す必要があるし、打ち出したとしても、外部圧力による円高を背景とした企業業績とのかい離を埋めることはできないだろう。日米実質金利差によるドル円の理論値は108円にまで低下している。このドル円の水準での日経平均株価の推計値は1万3800円となる。
ドル円が反発しなければ、日経平均株価は年初来安値を更新し、1万4000円をも割り込むことになるだろう。長期投資家が買い出動するには、現在の株価水準は明らかに割高である。買い場を待つ時間帯が当分続く。
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