通信業界の値下げ消耗戦は最終局面、主戦場は新端末開発に移行

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高機能端末の普及でARPU反転に期待

結論を言えば、大幅な値下げ競争は一巡したとみてよい。野村証券金融経済研究所の増野大作アナリストは「学生対象の割引が継続する可能性はある」としながらも、「(投入が早かった)auに続き08年はドコモとソフトバンクも、高速データ通信が得意な高機能端末の普及率が高まってくる。それにより、データ通信の定額制プランへの移行も進む」と、むしろデータ収入の増加に注目する。

最近のARPU推移を見ると、データ通信は伸びても音声の落ち込みが響き、全体では下降が続いている。中でも顧客獲得のために低価格を訴求したソフトバンクはARPUが低いのが見て取れる。

しかし、最近、携帯3社が力を入れる高機能端末には、グーグルやヤフーの検索エンジンが搭載され、「携帯のインターネットマシン化」が進んでいる。データ通信量が増えれば当然、使用料は増えるが、ユーザーは無制限に支払いが増加することを避けるため、従量制料金プランから定額制プランへ移行するのが一般的だ。定額制は、携帯各社にとっては上限金額以上の収入増は期待できないが、平均的な従量制使用料より高く値付けされているため、定額制への移行はARPUを押し上げる。

つまり、ユーザーにどんどんデータ通信を使いたいと思わせる新規端末をいかに開発・投入するか。そこが、各社の勝負どころになる。

一方、今後、値下げ合戦が一巡する中、他社からの顧客奪取でカギになるのも、やはり新規端末だ。

中でも、IT業界のビッグネームが携帯端末に参入しており、欧米市場に多大な影響を与えている。米アップルの「iPhone」は携帯音楽プレーヤー「iPod」との統合や斬新な使い勝手で際立ち、日本投入で提携するのはソフトバンクかドコモかとつねに注視される。

また、携帯OS「アンドロイド」で参入する米グーグルもキープレーヤーの1社だ。携帯各社がグーグルOSを取り込んでどんな端末を生み出すのか。個性的な端末で顧客争奪戦が繰り広げられることになる。

国内大手3社の端末主導の争いには、PHS専業のウィルコムと、07年春に新規参入を果たしたイー・モバイル(イー・アクセスの持ち分法会社)も割って入ろうとしている。

特にイー・モバイルは、高速データ通信と低価格で支持され始める中、3月末からは新端末2機種の投入で音声サービスも開始する。携帯ブロードバンドを基本に電話サービスを付け加えるという独自のスタンスで、電話基本料は何と無料だ。

千本倖生イー・モバイル会長兼CEOは「世界の携帯普及率では、(1人が1台以上持つ)100%以上の国は多くあり、(飽和したとされる)日本は50位」と語る。新規端末の競争は、法人向けでの2台目需要など、新市場創出にも向かいつつある。

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