JR北海道「再生」のために必要な施策とは何か 3月の新幹線開業後も経営課題は山積

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新造から30年近くも高速で走り続けた183系(撮影:村上悠太)

JR北海道は、再び安全性の高い鉄道に戻すべく「5年間の計画」を立てた。内容を絞ったとはいえ、積み上げられた金額は安全投資1,200億円、修繕費1,400億円の計2,600億円となった。年平均500億円強となる。しかも、この5年内の計画ではキハ40形取り替え等は手つかずのため、2019年度以降も同程度の投資を継続する必要がある。

しかしながら、これらの資金を捻出するため最大限の営業努力による収入増、経営安定基金の運用益増、土地の売却や子会社の売却等を行ったとしても、JR北海道が用意できる金額は5年間で1,400億円と試算され、残り1,200億円は独自には用意できない計算になった。
そこで、国土交通省は2015年6月、この1,200億円の支援を発表した。しかし、うち900億円は無利子貸付であり、いずれ返済しなければならない。

JR北海道では次のように予測する。5年間の計画により修繕費と減価償却費が増加するため毎年約400億円の営業損失が見込まれ、経営安定基金の運用益が約250億円としても、経常損益は約150億円の損失が見込まれる。支援が切れた後もJR北海道を継続的に経営してゆくためには、少なくとも経常損益を0にしなければならず、年間150億円分の経営改善が必要になる。

利用少ない駅は廃止

そこで、人件費や管理費を抑えるために使用頻度の低い設備の使用停止や撤去等を行う。この施策として昨年8月に発表されたのが、留萌線の一部、留萌~増毛間の鉄道事業廃止、11月に発表されたのが全道的に行われる利用の少ない列車の見直しであり、12月発表の本年3月改正内容には利用の少ない駅の廃止が織り込まれた。

留萌線留萌~増毛間は輸送密度が39人(1日1kmあたり)と道内で最も低く、収入100円に対して所要の費用で算出される営業係数は4161にもなる。加えて、斜面からの雪や土砂の流入をたびたび引き起こし、近年は二度の脱線事故につながった災害線区である。これらを抜本的に改善する防災工事は数十億円規模が予測された。このため、鉄道の維持は困難として、廃止が公表されたものである。時期は2016年度中とされた。

列車の削減については、直接の原因は老朽化したキハ40形にある。近年は故障が増加傾向にあり、メンテナンスにより多くの時間や経費をかける必要が生じている中で、運用可能な車両でしかダイヤが編成できなくなったもの。朝の通学列車は極力確保することとし、日中と夜間の列車を中心に、本年3月ダイヤ改正時から普通列車79本を削減する。

極端に利用が少ないとして同ダイヤ改正時に廃止される駅は、石勝線十三里、東追分、根室線花咲、石北線上白滝、旧白滝、下白滝、金華、函館線鷲ノ巣の計8駅。これらの駅はほぼすべて1日平均乗車人員は1人以下だった。

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